■ 「健康」 を無限化してみる (2/2)






ふき から尊敬のまなざしが
向けられていることに
気づいた かみね は、

あわてて、
こんな訂正を加えるのでした。




あ、でも 実のところ、

そんなに大したことは
出来ないんです。


なんというか、
「世の中に大きな影響を
与えるようなことは無理」


みたいな…





だから あたしも、

願いを選ぶときに
苦労させられたわよ。


「あれはできない」、「これはダメ」 て、

『 このジジィ、実は口ばっかの
エセ神さま なんじゃね? 』


て 思ったもんね。




し、師匠の悪口
言わないでくださいっ!





かみね が 半泣きになって
ネック に つかみかかりますが、

ネックは スルリと
それをよけて、

離れた場所から 鼻で笑うのでした。









でも、「スマホ」 も持ってるし、

結構 文化的なんじゃないの?
神さまたちも?





ふき の質問に
ハッとした かみね は、

袖の中からスマホを
取り出して、言いました。




これ、人間さんたちが
楽しそうにスマホを
使っているのが うらやましくて、

まねて作ってみたものなんです。


だから、見た目はスマホみたいだけど、
スマホじゃないんですよね…


空気中の電波を拾って
データを読むことはできるけど、

こちらから書き込んだり
とかは できない
んです…




ダウンロードはできても、
アップロードはできない…

という感じですか。




だから、ふきさん にも、

SNS で 「ともだち申請」
できない
んです…!




そ、それは まあ、

別に いいんだけどね…





なにか、

わたしたちという存在自体が、
そもそも そういう
もののようですね…


長く生きることはできるけれど、

世の中に直接は
かかわれない
、みたいな…





病気もせずに健康なまま、
200年 300年 も生きられるなんて、

ふきたち から見たら
ものすごく うらやましい
生物のようですが、

「世の中に かかわれない」
と言った かみね の顔は、

ちょっと寂しそうです。





そんな かみね
見つめていた ふき の脳裏に、

先日の、ミューラーネック の会話が、
よみがえってくるのでした。





なにもせずに年齢だけを重ねて、
やがて寿命をむかえる…


そのような人生で、

本当に 『生きた』 と
言えるのでしょうか?





そんな 無意味な 「人生」 だけは、

あたしは 御免したいねぇ…






人間である ふき たちも、同じです。


たとえ、どんなに長く生きられても、

ただ ダラダラと
物を消費するばかりで、

世の中に何も残せず
死んでいくとしたら、

そんな人生の
どこが 「しあわせ」 でしょう…?






健康なだけじゃ…

長生きするだけじゃ…

「無意味」 なんだ。




そんなふうに
つぶやく ふき の、

その横腹あたりを
グーパンチした ネック は、


彼を見上げて
ニヤリと ほほえむのでした。










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