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唐沢俊一 と「女性自身」広告審議会 | |
『 女性自身ってば!? 』 |
1990年代の半ば の ある日、 当時 20代前半だった自分は、 『女性自身ってば!?』 という不思議なタイトルの本に 出会いました。 『女性自身』といえば たしか 芸能界や政治家や大企業の 悪口が並ぶ 女性向け雑誌 … と 記憶していた自分は、 (おそらく、他社の女性雑誌の記憶も ゴッチャになっているとは思いますが) 『〜ってば!?』という タイトルからして、 そうした雑誌の下世話ぶりを指摘して 的確に あざ笑ってくれている そんな本だと思い込み、 レジへ向かいました。 (パラパラと めくって目を通してみた感じも それっぽかったので) 「低俗な雑誌で喜んでいる連中」の 愚かさを 指摘した本 を読むことで、 「そうではない自分」に 自信をつけるというか、 そうした他者批判に頼らなくても 今後の自分の人生(未来)に 手応えを感じつつある、 そんな 今の自身の幸せを さらに再認識したい ような、 (自分より明らかに劣った存在を、 安全地帯から眺めて 溜飲を下げるような…) そんな 若さ特有の さもしい思惑 も あったのだと思います(苦笑) |
ところが、 帰宅して 読み始めてみると… 何か この本は 僕が想像していた内容と 違う ようです。 いえ、たしかに 『女性自身』の記事の下世話ぶりを 指摘しては いる のです。 いるのですが、 その一方で、 『表紙のタイトル配置の 見事さ』 『読み手の興味をそそる タイトル付けの 巧妙さ』 『使用写真の選別の 手腕』 などなど、 その 良くも悪くも 洗練されまくった 『情報操作』の テクニック を、 これでもかと言わんばかりに 指摘・嘲笑・称賛 しているのです。 つまり この本は、 雑誌『女性自身』を教材とした 『情報発信における 心理学テクニック』の 解説本 という側面を 持ち合わせていたのです! 自分のことに精一杯 で、 「他者の心を操る」という方面の 知識も経験も希薄だった 20代前半の自分にとって、 この本で解説されている マスコミの操作テクニック は あまりに衝撃 でした。 読み終わってから しばらくは、 『ここまで簡単にマスコミに (そして おそらくは、 政府や大企業や、一部の個人にすらも) 自分の心を操作されてしまう 僕たち一般庶民って、 「自分で考えて生きている」と 勝手に思い込んでいるだけで、 実は「自分の意思による 物事の決定」なんて、 何ひとつ 出来ていない んじゃないか??』 …と、 物凄いショック と 落胆 を おぼえたものです… (ちなみに、この5年後に 『脳や心理学』について勉強しはじめたときにも、 類似の 大ショック を受けました(苦笑)) |
しかし、 『事実』を知った 衝撃 が 大きかっただけに、 そこから得たものも 絶大 で… それ以降の自分は 新聞やテレビなどを見ても、 情報をそのまま 真に受ける ような事はせず、 そこに施されている 『心理操作テクニック』や、 裏に存在するかもしれない 『発信側の意思(損得)』を、 必ず一度 立ち止まって 確認・思考するクセ を 持てるようになりました。 きっと、こんな 物の見方は、 それなりにシッカリと 人生を生きてきた人であれば 「自然に体得」しているのでしょうが… 「三重県」という 比較的温厚な土地で、 良く言えば「素朴」、 悪く言えば「無警戒で無思考」な日々を 当たり前として生きてきた自分にとって、 この1冊こそが 『情報に対して、本当の意味で 「大人」な対応のできるキッカケ』を 与えてくれた名著であったのです。 |
この文章を書いている時点で、 すでに 発売から四半世紀以上 が 経過してしまっているため、 実物を入手する事は かなり困難 とは思いますが… (というより、この本で語られている 「松田聖子」や「中森明菜」という名を聞いて ピンと来る若者が すでに存在しないような…) この本の 深い価値 と、 著者『唐沢俊一さん』への感謝を どこかに書き残しておきたい思い を 抑えられず(笑)、 本当に遅まきながら 当書の紹介に至った次第です。 |
このページを書いてから、 2年ほどが経った 2024年 9月に、 著者である「唐沢俊一さん」が、 66才の若さで 亡くなられました。 2023年 1月に、X(Twitter)で ご本人の投稿に『女性自身ってば!?』に ふれて リツイートしたところ、 なんと ご本人から 「私の著者の中でも かなりマニアックな一冊です」 と 好意的なコメントをいただけた事は、 誇らしくも あたたかい思い出の1つです。 その右翼的な発言から、 (正確には 中道(中立)に近いのですが) 左翼界隈からは 大変 煙たがられていた ようですが、 (ただし、精力的に唐沢さんを批判していた左翼の人々は、 左翼界隈でも かなり特殊というか、 「思考が偏向しすぎている危ない輩」が多かったです) 批判の中にも 怒りで自分を見失わない ユーモアさを備えた 語り口 には、 「本物の論客」の 貫禄がありました。 「著者『唐沢俊一さん』への感謝を どこかに書き残しておきたい」 という思いから このページを書き上げ、 著者さんの目にふれ、 コメントをいただく幸運を得たのが、 ご本人が亡くなられる わずか1年半前 だったとは… 本当に 人生において 「他人に伝えるべき思い」は、 手遅れになる前に 1日も早く伝えておくべき だ、 という真理を、 しみじみ 再認識・勉強させられました… さようなら、唐沢俊一さん。 どうか 安らかに… |
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