■『品物』を いっぱい持っているから しあわせ





この室内を
見てくださいよ…

ネックさん。




ふき は、両手を
大げさに広げながら

クル〜リ と
体を1回転させて、

自信満々に ほほえみました。





この部屋… マンションは、
いわば 俺の城 です。


そして、この部屋の中にある
数々の品物も、
俺が働いてそろえた…

…いや まあ、
一部は 父さん・母さん や、
じいちゃん・ばあちゃん から
譲られた物もあるんですが、

そうやって積み上げてきた、
俺の 「人生の結晶」なんですよ。





世の中には、

生活を豊かにしてくれる
こうした品物を
買いそろえるどころか、

目先の生活費にすら困って
ピーピー言ってる、
無計画な貧乏人ども

増えているようですが…


そんな連中に比べたら、
自分は 本っ当に
しあわせ者だと実感します。




この室内の品々を
見まわしているだけで、

オレは、自分の人生が
間違っていない
ことを、

ヒシヒシと感じずには
おれませんね〜





うん、分かるよ ふき


あたしも、この部屋
大好きだよ?





背後から、ネック
そんな感想が聞こえ、




「そうでしょう、そうでしょう」

と ニコやかに
振り返った ふき は、


その顔面を
青黒くしました。








ここに引っ越して以来、

キズがつかないよう
大事に大事に あつかってきた
マンションの壁に、


ネック が、

50センチは
あろうかという
見事な 縦のヒッカキ傷

を こしらえて、

恍惚とした表情を
浮かべていたからです。





やっぱり、

人間の家の壁
イイよねぇ…


ノラやってると、
木の幹とか
コンクリ壁ばっかで、

「爪とぎ」が やりにくくって
しょうがない
のよ。




あーー、
なつかしい この感覚…

「家ネコばんざい」だね。









この後、室内は、

壁からムリヤリ
引きはがされて
不機嫌になった ネック と、


その壁に しがみついて
「敷金があぁ」
泣きわめく ふき で、


軽い修羅場と なったそうです。


  






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