とりあえず、 自分の現状と気持ちを 2匹に打ち明け、 隠しごとが無くなって いくらかスッキリした ふき でしたが… なにか、自分だけが 『世の中から見て ズバ抜けた不幸者』 みたいに2匹に思われるのは イヤだったので… | |
「決して 僕だけが特別不幸という わけではないんですよ?」 「他の人たちだって、 ツラい生活をしているんですよ?」 | |
という点だけは 説明しておこうと思いました。 そこで、自分の友人たちや、 SNS などの知り合いたち、 ニュースなどで語られる 見ず知らずの人たちが、 どれほど仕事で苦しんでいるか? について 2匹に説明をしてみることにしました。 システムエンジニアである、 古くからの 親友A は、 毎日毎日 残業のくりかえしで、 長期出張も多くて大変だということ… SNS で知り合った Bさん は、 ケアマネージャとして がんばっているものの、 慢性的な人手不足で、 精神的にもキツい日々が続いていること… 会社に縛られない 自分らしい仕事をするために、 自ら会社をおこしたベンチャー気質の Cさん も、 会社を維持するために 目先の仕事を取るために営業に走り回り、 クライアントからの理不尽な要求などで、 「自分らしい仕事」 とは ほど遠い、 胃に穴のあくような日々を送っていること… 比較的 安定性があると言われている 公務員の Dさん も、 日々の全く変化のない業務の繰り返しに、 当初は気が狂いそうになるほどの不安をおぼえ、 最近では 逆に そのことに不安すら おぼえられなくなってしまっている無感動な自分に、 さらに 言いようのない恐怖を感じていること… など など など… 汲めどもつきぬ泉のように 湧き上がってくる 『他人から聞いた 仕事のグチ』… それらを次々と並べ、 説明していた ふき に、 ネック が ポツリとつぶやきました。 | |
えーと、ふき… 聞けば聞くほど、 『仕事をしている』 ことが幸せだとは、 あたしには思えないんですけど…? | |
しまった… デッカイ墓穴を掘ってしまったことに、 ふき は、ようやく気がつきました。 ミューラー も、困ったような顔で、 ふき を見つめています。 そういえば 今日の自分は、 「仕事に就けていることの幸せ」 を、 ネックたちに説明するつもりだったのに…? どうして こんな話を してしまったのだろう?? ただ、ここまで話した いろいろな人たちの 「仕事上の つらい話」 は、 もちろん 決して ふき の作り話ではありません。 あるいは酒の席で、 あるいは SNS を通じて、 けっこう深刻に告白された 「実話」 ばかりなのです。 しかし、こうして列挙してみると、 今の時代、自分を含む 多くの人々が、 いかに仕事において疲弊しきって しまっているのか がヒシヒシと分かり、 必ずしも、『仕事に就けさえすれば幸せ!』 なんてことは無い… と いうか、 むしろ 仕事の中で幸福を感じている人 のほうが レアケースなのだな… と、 ちょっと暗い気持ちに なってしまった ふき でした。 …ん? というか、どうして今まで自分は 「仕事に就けていて幸せ」 だと 思っていたんだっけ…?? そんなふうに考え込んでいた ふき に、 ネック が何かを思い出して、 こんなことを切り出しました。 | |
あー、そうそう。 あたし、前々から ふき に聞こうと思ってた ことがあったんだ。 ちょうど 「仕事」 の話だから、 今 聞いとくね。 | |
| |
…え、ええ まあ、 かまわないですけど? | |
気軽に応じた ふき でしたが、 直後にネックは、 とんでもない一言を放ったのでした。 |