■『仕事』は、本当に
社会貢献?(3/6)





いきなりで
アレなんだけどさ、ふき


そもそも あんたの会社って、
本当に必要なの?





ネック の この言葉に、

ふき は自分の魂が
どこかにスポーンと
飛んで行ったかのような気がして、

30秒ほど 茫然と立ちつくしてしまいました。











だって ねぇ…

ネック が そう言いながら、
ふき に差し出したのは、

ソーシャルゲームの情報誌 です。





こーんなに たくさんの
ゲーム会社があるんだから、

別に あんたンところ含めて
10個 20個 会社が無くなったって、
ユーザーは困らない
んじゃないの?


まあ、そこで働いてる
「あんたたち」だけ は、

明日から生活できなくて
困るだろうけど…






そそそそそそそれは、あれですか!

『ゲーム業界そのもの』
への批判ですか!?

ゲームみたいな
役に立たない くだらないものを
作ってる俺らなんか、

いなくなっても、
別に 世の中は困らん
みたいな…




昔から たびたび
社会の やり玉 に挙げられてきた
ゲーム業界の姿を知っている ふき は、

ネック の暴言(?)を
そう解釈したのです。





しかし、そこに すかさず
異を唱えてくれたのが、

理知派のトンビ紳士でした。




ゲームをはじめとする
遊び・娯楽 というものは、

人間さんたちのような
高度な生物にとって、
メンタルコントロールの選択肢…

つまり、『ストレス解消』 において、
無くてはならないものです。


ゲームは決して
不要な存在ではないと、
私自身は考えます。





ミューラーは、ふき の家に来て
(当然ですが) 初めて
「コンピュータゲーム」 というものにふれ、

特に 『テトリス』 の、
シンプルな中にも見事に完結している
ゲームシステム
について、
深い感銘を受けているようで…


彼なりの ゲーム文化への
理解があるようです。




ふきは、うれしさに
ちょっと涙ぐみました。








ところが、トンビ紳士は、
直後に こう続けたのです。


「…でも、ネックさんが言いたいのは、
そんな事ではないのでしょう?」







「モチよ」







うなずく ネック を見て、

ようやく ふき も、
彼女は 別に 「ゲーム業界批判」 を
していたわけではない、と

遅まきながら 気がついたのです。






たとえば あたし、

ふきんチに来てから、
新聞に入っているチラシ
読むようになったんだけどさ。


毎日 すごい数が入ってるよね?

今日は土曜日だから、
食べ物のチラシだけでも
10枚ぐらいあるじゃん。


でも、お店って
本当に こんなに必要なのかな?





言われてみれば、

こんなにチラシが入っているのに、
自分は、いつも だいたい決まった店か、

チラシを見回して
特別に安売りをしている店に、
たまに足を運ぶ程度です。



それどころか最近は、
新しい店ができたとき、

「今度は どんな店が出来たんだろう!」
というワクワク感どころか、

「まーた 新たに調べなくちゃいけない店が
増えちゃったよ…」
といった、

自分の今までのペースをかき乱されたような、
ちょっとイヤな思いを
抱くことすらあったのです。







選択肢は こんなにあるのに、
よく考えてみると、
そんなに選択していない…


それどころか、
選択するのにウンザリしている
自分がいる…




それは なぜだろう?

それは…









それは結局、お店が…

お店を経営している人々の数自体が、
多すぎるから
ではないでしょうか?


『供給過多』

なってしまっているのだと思います。





考え込んでいた ふき に、

ミューラー が放った その4文字が、
天啓のように降りそそぎました。










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