『供給過多』! 気づいてみれば当たり前ですが、 たしかに その通りです。 ふき が、お店の選択を メンドウだと感じていたのは、 選ぶべき お店が多すぎて… つまり 『選択肢が多すぎて』 、 それを選んでいるだけで グッタリと疲れてしまっていたのです。 ましてや最近の 食品・生活雑貨の販売店は、 なんらかの大手チェーンに属した 店舗であることが多く、 当然、それぞれの店の差は ほぼ ありませんし… 昨今は、別チェーンであっても、 置いてある商品が似かよっていて、 ときどき、自分が今いるのが どのチェーン店だったかを、 フッと ド忘れすることすらありました。 そして… よくよく考えてみると、それは、 食品・生活雑貨関係のお店に 限ったことでは無いのです。 今の世の中には、 本当に 恐ろしいほどの数の、 『似かよった選択肢』 … 似たような お店・企業・商品やサービス が あふれている ことに、 今さらながらに ふき は気づき、 愕然としたのでした。 | |
そうか、ゲーム業界だけじゃないんだ。 今の世の中の 本当に いろいろなものが、 考えてみれば 『供給過多』 なんだ… | |
ふき の、そんな独り言のような結論を聞いて、 彼が何に気がついたかを察した ネック は、 「…そーゆーことよ、ふき」 と、いつもの不敵な笑みを 見せました。 | |
あんたの会社は、 最近はソーシャルゲームを作って かなり儲けてるみたいだけど、 どのゲームも みーんな、 見た目が ちょっと キレイでハデになっただけ… ようは、他の会社のやつの類似品じゃん? | |
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てことは、 そんな会社が無くなっても、 別に ユーザーは困らないわけ。 『似たような代わりのゲームは、 すでに いくらでもある』 んだもんね。 | |
ネック の言葉に、 ミューラー も続きます。 | |
私も不思議に思っていたのです。 ふきくん のパソコンやスマホに入っている、 他のいろんな会社さんのゲームって、 ゲームのルール… つまりゲームシステムが、 どれも非常に似かよっている… 必要とされる思考に 大差が無く、 したがって複数のゲームを遊んでみても、 代わりばえがしなくて、 そこには 新鮮な驚きも 喜びもありません。 | |
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つまり、 『会社の数は 大量にあるのに、 個別の商品・サービスとしての 価値や選択肢が、 ほとんど存在しない』 のです。 | |
「つまり」 「別に それらが無くっても、 みんな 大して困らないのですw」 ちょっとトンビ紳士の口調をまねて、 ネック が そんな口をはさみました。 | |
もちろん 新商品… 新しいシステムのゲームを 産み出すのは、 制作スタッフにとっても 大変な苦労があるでしょうし、 会社としても 非常なリスクを 背負わなければらない… だから、なるべく 「既存の 売れた商品」 に 似せたものを作って、 大ヒットは無くても、 大ハズレもしないラインに、 大半の会社の商品レベルが 集中してしまう のでしょう。 | |
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でもそれは あくまで、 『作り手・売り手 の都合』 であって、 私たちユーザーにとっては、 言い方は冷たいかもしれませんが 「どうでも よいこと」 ですよね? こんな、ユーザーにとって どうでもいいゲームが、 「供給過多」 になるほど 発売・配信されている のは… なぜでしょう? | |
次に来る結論が 分かってしまった ふき は、 何か自分の体温が 2度ほど下がったような気持ちで、 ミューラー の口元を見つめました。 | |
残念ながら、こう結論づけざるを得ません。 少なくとも現時点では、 ゲーム業界に限らず、 会社・お店 というもの自体が、 「社会貢献」 でも何でもなく、 そこに属する個人や集団が、 自分の生活を守るために 運営・協力されているだけに 過ぎないもの なのです。 | |
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資本主義社会において、 会社や お店を 維持する以上、 社会にどういう影響を 与えるか? 与えてしまうか? は 二の次 で… どういう収益が得られるか? を 最優先事項とせざるを得ない わけなのでしょうね… | |
『会社で働くことは、 社会貢献でもなんでもなく、 自分たちの生活費を 稼ぐための手段』… ふき には、あまりにショックな結論でした。 が、否定しようにも、 自分の生活費のために、 ユーザーさんたちを小馬鹿にしながら、 イヤイヤ 「サポート業務」 をしていた ふき に、 一体 何が言えるというのでしょう? 自らの今までの日々が、 なにより雄弁に、 ミューラーの結論を 実証してしまっているのですから… |
『仕事は、社会貢献でも 何でもなく、 自分の生活の糧のために やっている』… 良いか悪いか ではなく、 「事実」 として、 まず その点を直視しましょう。 |