「仕事」 は、本当に社会貢献? (5/6)





あの… ふきくん。

お腹が すきませんか?





突然、ミューラー
そんなこと言い出したので、

ショックな結論を聞かされて、
茫然としていた ふき は、
仰天しました。








私、前々から、
人間さんたちが食べている
『ピザ』 というものに
興味があったのです。


ネックさんの読んでいる広告の中に、
ちょうど おいしそうな
ピザ屋さんのものも ありますよね。


どうでしょう?

私たちに、ピザを
ご馳走していただけないでしょうか?





あー、それ 賛成。

ふき みたいなバカに
アレコレ教えてると、
すごい疲れて お腹へっちゃうのよね。




あたし、カラいの苦手だから、
このシーフードのやつ 希望ね。

ミューラー
あんたも これでいいでしょ?





トンビ紳士は、
ニッコリと うなずきました。








ふき。 ケチケチしないで、

バーンと この 大っきいの
注文しなさいよ?





ネック は、

自分の体長ほどもある
Lサイズのピザ
の写真を
指差しながら、

そんなことを言って
ふき をにらむのでした。




ふき は、突然の出費に
半泣きになりながら、
パーティ用のデッカいピザを
電話注文しました。





(この物語はフィクションです。 実際には、シーフードピザには、
猫や鳥の身体にとっては良くないものも一部に入っているので、
絶対に食べさせないであげてくださいね)









さて…

宅配された 平べったくて大きな紙箱を
ふき が テーブルの上で開けると、


トンビは、ピザの壮観に
「ほほ〜〜」 と感嘆の声をあげ、





白猫は、トッピングの
シーフードの香りを
フンフンかいで、
ウットリとした顔つきになりました。










ところで、ふきくん?


ミューラーが急に
ふき のほうに向き直って、

こんなことを聞いてきました。





このピザ、

われわれ全員で分けたら、
どれくらいずつに なるでしょう?




え!? そ、そりゃ、
3分の1ずつだから、

360度 を 3 で割って、えーと…




ほんはもも、

はやひももはひよ。




ネック

「そんなもの、早い者勝ちよ」
と言いました。


早くも トッピングのエビを
口いっぱいに ほおばりながら…







1つあたり、120度。

扇形のようなピザを、
分け合うことになりますね。




ミューラー は、
そんな ネック の姿を見て、

困ったように笑いながら、
答えを教えてくれました。






「さて、問題はここからです」




ミューラー が、
ちょっとマジメな顔つきになりました。





ここに もっと人が集まって、

たとえば 10人いたとしたら、
どうなるでしょう?



えーと… 1つあたり 36度。

三角定規みたいなピザに
なっちゃいますよね?





ふき の回答に
ニッコリほほえんだトンビは、

しかし続けて、こう問うたのです。




では、20人 ならどうでしょう?

30人 では…?





そこまでに なってしまうと、

もう、「果物ナイフのような
ツンツンの細ーい切れ端」 に
なってしまうことでしょう。


一応 皆の口にはピザは入りますが、
とても お腹がふくれるとは思えません。




でも、ミューラー は どうして、
こんな話を始めたのでしょう??






実はですね、ふきくん…

このピザこそが、『市場』 なのです。


そして、その場に集まった人の数が、
「会社や店の数」 です。


もちろん、実際には
ここまで均等には、
収益は分配されませんが…





ふき は、「あっ!」 と思い出しました。



そういえば、この たとえ話 は、
何かで 読んだか
聞いたか したことがあります。



市場に参加する者が…
仕事や商売をする者が増えれば、

それぞれの収益は
どうしても下がってしまう…


皆で分けたピザが小さくなりすぎれば、
(個々人の収入が低くなりすぎれば)

皆のお腹が満たされなくなってしまう
(皆の生活が立ち行かなくなってしまう)

という可能性も あり得ます。





かといって、
自分が働かなければ、

自分の収入が無くなり、
生きていくこともできません
し…


なんとも悲しいジレンマです。






これが、私たちのような動物であれば、

エサが足りなくなって
死んでしまうものが出るなどして、
結果的にバランスが
取れていくものなのですが…



人間さんたちの社会には、
お互いに助け合い、命を尊重するという
すばらしいシステムがあるため、

良くも悪くも そうしたバランス調整が
利きづらくなっているところが
あるのだと思います。






ふき は、ちょっともう 気軽に
『仕事ができて幸せ!』 とは
言えない気分になってきました。










そういう事よ? ふき



ネック が、

いつものクールなセリフを決めました。




口いっぱいに
ほおばったピザのせいで、

「ほおゆうほほよ? ふひ」

としか聞こえませんでしたが…










[章の 目次 に戻る]