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そういえば、実は私、 もう1点 気になっていた ことがあるのですが… | |
ミューラー が そんなことを言いながら、 何やら ふき のパソコンを 操作しはじめました。 羽根ではキーボードは打てないので、 器用にクチバシで タイピングをしています。 『キ、キーボードが へこむ!』 ふき が心の中で絶叫し、 顔面を青くしました。 | |
ふきくん が勤めておいでの ゲーム会社は、 こちらで よろしいのですよね? | |
パソコンの画面には、 たしかに ふき の会社のサイトが 表示されております。 「そ、そうですよ?」 意味が分からないまま、 うなずく ふき … | |
ふーむ… これが 「会社概要」 で、 役員名一覧がこれで… 系列は… | |
ミューラー は しばらく、 ふき の会社のサイトの あちこちを見たり、 ネット検索で 飛び回ったりしていましたが… それらが終わると、 クルリと ふき のほうに 向き直りました。 | |
ふきくん。 ふきくん の会社の役員である、 この 「○山 □男」さんですが… | |
うちの会社の役員に、 こういう人がいたのか… ふき は、自分の会社の上層部など、 確認したこともありませんでした。 | |
この人、以前 ふきくん が 「ヒドい政治家だ」 と言っていた、 「○山 □朗」さんの、 息子さん のようなのですが… ご存知でしたでしょうか? | |
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…え?? | |
ふき は あわてて、 自社のサイトを見直しました。 たしかに、この 「○山 □男」、 ふき が嫌っている△△党の 代表格の議員と苗字が同じですし、 検索してみると、 その息子の名前と同じです。 | |
…で、でも、 世の中、同姓同名の人なんて いくらでもいるし… | |
そんな反論をした ふき でしたが、 ミューラー は さらにクチバシでキーを操作し、 ふき の会社のサイトの 「系列企業」 のページを開きました。 | |
でも、ふきくん の勤めている会社って、 親会社 は、『☆☆カンパニー』 ですよね? 総合的に メディアやエンタテインメント業界に サービスを展開している会社さんのようですが… この 『☆☆カンパニー』 のサイトを 確認してみると、 「○山 □朗」議員 が主要株主の1人 として 名をつらねていますし… 他の役員さんを見てみても 「○山」 という苗字が やたらと多いです。 | |
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この 『☆☆カンパニー』、 「○山 □朗」議員の ご親戚による 同族経営の会社 なのではありませんか? | |
親会社の 株主 と 役員??? 自分の会社の役員すら 知らなかった ふき にとって、 今までの人生において 思考したことすら無かった 範疇(はんちゅう)の話でした… | |
なによ あんた。 自分の嫌いな奴のために、 必死こいて働いてたわけ? すごい お人好しもあったものね。 | |
ネックが、憐みをふくんだ 苦笑を浮かべています。 | |
やはり そうでしたか… 以前 ふきくん が テレビを見ながらお話ししていた、 「お嫌いな政治家さん」 の苗字が ちょっと珍しいものだったのと、 先日 机の上に置いてあって目にした ふきくん の会社の入社案内に、 まったく同じ苗字があって、 名前の1文字目も同じだったので、 「もしや…?」 とは 思っていたのですが… | |
こんな事が あるのでしょうか? たしかに、ふき が 今のゲーム会社に就職したのは、 自分が行きたいと 考えていた会社というより、 就職難の このご時世ですから、 『就職さえできれば どこでもいい!』 という気持ちで応募した、 ハッキリいってイイカゲンな選択の 結果であったことは確かなのですが… そんな動機の就職活動ですから、 当然、事前に応募先企業のサイトに ジックリ目を通すといったことも、 ほとんど していませんでした。 (給料の額と、ボーナスのあるなしなどは、 シッカリ確認しましたが) 就職した後も、 『会社は、どこだってかまわない。 大切なのは、とにかくガムシャラに働くこと! そうすれば、いつか必ず、 幸せな人生を掴むことができるのだ!』 という信念(?)のもと、 自分の夢と生活のために、 脇目もふらず… 厳しい言い方をすれば、 『周りを よく確認せずに』 走ってきたような気がします。 | |
『馬車馬(ばしゃうま)』 とか言うんでしょ? そういうの。 | |
本っ当に ムカつく言葉だけは よく知っているな、この猫は… でも たしかに、 ふき がガムシャラに働いて 生み出した会社の利益の一部は、 わずかずつ とはいえ 間違いなく 「○山 □朗」 の一族のフトコロに入って、 彼らの活動資金に なっていたはずです。 もちろん、生活できるだけの ニンジン(給料)は 対価として もらっていましたが、 ふき たちが死にもの狂いで運んだ 荷物(仕事)による 儲け は、 大半が経営者のもとへ… そして、株主のもとへ、流れていたはず… 日頃、「○山 □朗」 の政治活動を 『腹黒議員め!』 と罵っている一方で、 実は、その議員の一族会社のために、 セッセと汗水たらしていた ふき… こんなにコッケイな構図があるでしょうか? | |
社会とは、 「つながり」 のシステムですが… 「つながっている先」 を 把握しないでいると、 こんなことが起こる 場合もあるのですね… | |
人間の文化に深い興味を持つ ミューラー ですが、 その 難しい側面 の1つを見せられて、 しみじみと考え込むのでした。 そして ふき自身も、 『仕事ができるだけで 幸福!』 みたいな 無思考な高揚感 とは、 今日かぎりオサラバだろうな… という、たしかな予感を感じるのでした。 |
『自分の勤めている会社は、 どういう系列に属しているのか?』 『自分の勤めている会社の収益は、 どこへ流れて行くのか?』 といった点を、可能なかぎり 把握しておきたいものです。 そうしないと、 自分では、自分のしあわせのために 脇目もふらず努力しているつもりが、 実は 「がんばれば がんばるほど、 自分を不幸にする勢力に資金が流れ、 自分の望む しあわせな未来から 遠ざかってしまっている」… 「自分の しあわせを、 自ら 遠ざけてしまっている」 場合も、 あるかもしれないからです。 |