■ 「お金」 を、生存本能で考える






次は、『お金』 だっけ?

これも簡単だよねぇ。




そ、そうなの…?




ネック に サラッと
「簡単」 だと言われてしまい、

ふき は 戸惑いました。





はい。

何度か ふれてきたとおり、

資本主義社会に おいては、

所有している資金量は、
自分の自由度に つながります。





もちろん、お金で命を
買うことはできませんが、

お金があれば
自分の生活環境を
整えることができますし、

病気やケガになってしまったときにも、
手厚い治療を受けることができます。



それによって間違いなく、

自分の… DNA の、
『生存確率』 は 上がります
よね。





そんな トンビ紳士の解説が
一区切りしたとき、

突然 ふき が、
こんな話を切り出しました。





で、でも、

お金を持っているせいで
誰かに ねたまれて、
殺されちゃったりする
ことも
あるじゃない?


それって つまり、

「お金」 のせいで
「死」 を引き寄せちゃったことに
なるんじゃないの?





これって、

お金を持つことが必ずしも、
DNA の生存確率の上昇に…
つまり 「しあわせ」 に、

直結していないっていう
証拠の1つ
なんじゃないかなぁ…





そんなことを指摘した ふき を、

3匹はしばらく、
キョトンとした顔で
見つめていましたが…


    






その中で、
最初に口を開いたのは、
かみね でした。




ふ、ふきさん、すごい!

本当に そうですよね。


わたし、ふきさん が こんなに
深い洞察をお持ちだなんて、
ビックリしちゃいました。





かみね は、
スラリとした2本の前足で
ふき の 手をにぎって、

うれしそうにピョンピョンと
はねるのでした。





そ そ そう?

いや まあ、
物事ってものは
何でも多角的に見ないと、

真実は見えてこないからねぇ…





そんなことを、
照れてニヤニヤしながら言う ふき に、

ネック が 一言
こう言いました。





アホか、あんた…?





ふきかみね は、
手を握り合ったまま、

「へ…?」 と言って
停止してしまいました。


  






お金目当ての殺人が起こるのは、

少なくとも犯人にとっては、
『お金 > 命(DNA)』
って事なんでしょうね。


そこんとこは たしかに、
ふき の言う通りだよ?





でもね。

よーく考えてごらん?

この場合の 「命」 ってのは、
「誰の」 命 のことよ?






…あ!


  




ふきかみね の顔が
同時に白くなり、

ミューラー が、
うんうん と うなずきました。





そうなのです。

ふきくん の指摘は一見すると
するどいように見えますが、

実は、比較するべき対象が
間違っている
んですよね。


お金目的の殺人というものは、
『お金 > 他人の命(DNA)』
という構図で発生するものであって、

『お金 > 自分の命(DNA)』
ではない
のです。






ミューラー
何度も言ってきたっしょ?

『「己の」 生存確率を向上させることだ』 って…


だから あんたも、

「自分が生きることだけが目的だなんて、
人間は そこまで愚かじゃないよ!」


とか 怒ってたんじゃなかったっけ?


記憶力、どこに落っことしてきたのよ?






そうでした…






自分を 「DNAの奴隷」 のように
思いたくない気持ちから、

ふき は、とんでもない
オウンゴール
決めてしまったようです。




そんな ふき
褒めちぎってしまった かみね も、

自分のミスに気付いて、

そろそろ〜 と、ふき の手から
自分の前足をはなすのでした。










というか さ…


ネック が、

ウンザリした表情で続けます。




『お金を持っているから、
自分の人生は しあわせ!』
って 最初に言い出したのは、

他でもない ふき
あんた なんだけどねぇ?



記憶力、どこに落っことしてきたのよ?






あきれる ネック と、
それを 「まあまあ」 と なだめる
ミューラー を見つめながら、ふき は、


「他人と自分の発言は、
もっとキチンと記憶しよう…」





と、半泣きで
心に誓ったりするのでした。







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