■ 「物」 を、生存本能で考える






次は 『物』 についてですね。


物といっても色々ありますが、
その根底には 「道具」 …

生活の利便性を高める という
目的が こめられています。





かみね も、

リビングの天井を
見渡すようにしながら言いました。




人間さんたちが住んでいる
こうした 「お家」 も、

ミューラーさん たちが使う
「巣」 を発展させて、
より使いやすくした
「物」 の1つですものね。


当然、巣よりも
生存確率は高くなってますし…





その通りです。

また、人間さんたちには、
われわれのような
豊富な体毛はありませんが、

「衣服」 の調節によって、
短時間で好みの保温状態を
作り出すことができます。





ノラの あたしからすれば、
うらやましい話だよね。

毛皮って 大変なんだよ? ふき

夏は暑いしねぇ…




しかも、生え代わりに
時間がかかっちゃうから、

春になって毛が抜けたあとに、
急に気候が変わって
寒くなったりすると、

もぉ どうしようなくて、
丸まって震えるしか無くなるから、
泣けてくるよ…




ネック が、

公園に居たころの自分を
思い返して、苦笑しています。





さまざまな 「家電」 のおかげで、
家事労働の負担は減り、

自動車などの 「乗り物」
移動にかかる時間を短縮化、

「コンピュータ」 の発達・一般化で
頭脳労働も効率化されている…





これらが、
生活の中で発生する
疲労を軽減
し、

それにかかる 時間も短縮
してくれているおかげで、

人間さんたちには
『 時間的・精神的余裕 』
が うまれ、

その文明は、
さらにスピーディに発展していく…



『物』 の、『道具』 の存在が、

人間さんたち全体の
生存確率を底上げ

しているのです。





これが、DNA にとって
「しあわせ」 でなくて、
何なのでしょう!





ミューラー は、
羽根で握りこぶしを作り、

我がことのように興奮しながら、
人間の英知を絶賛 するのでした。






言われて ふき は、

自分の家の中にある品物を
グルリと見まわしてみました。






当たり前のように
自分の生活の中にあったので、

今まで深く考えたことは
無かったですが、


こうして1つ1つの物を、道具を、
あらためてジックリと
観察してみると、

そこに、人類の工夫と努力が
深々としみこんでいること

今さらながら気づいて、

なんともいえない感動を
おぼえるのでした。






まるで…

DNA みたい だなぁ…




ふきは、ポツリと つぶやきました。





DNA の中には、

「生存のための さまざまな知識」
が こめられていますが、


世の中に数多(あまた)存在する
『物・道具』 もまた、

「生存のための知識」
の結晶たちです。




目にも見えない微細な分子の
集合体である DNA によって
生み出された 「人間」 が、

『道具』 という、
アイディアを目に見える形にした物を
次々と生み出していくことで、

新たで 巨大な DNA を、
協力して組み上げつつある…





ふき の中に、

身の引きしまるような思いが
湧いてくるのでした。









今回の検証については、

ふき は まったく疑問も無く、
スンナリと納得することが
できました。



それは、

「ゲーム」 という無形物とはいえ、
物づくり に関わる生活を
送っている ふき にとって、

『 物の生み出す価値 』
という視点に、

元々、深いなじみが
あったからかもしれません。







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