ミューラーの、思い出の岩場(6/7)





ところが
しばらくすると、

ふきくん は
水をかき出すのを
ピタリと やめて



とても 悲しそうな
顔つき
で、

しばらく、
「くぼみ」の水面を
見おろしておりました…





そして 今度は
不思議なことに、

海から 岩の「くぼみ」に
セッセと海水を
入れ直して、



やがて、ガックリと
肩を落としたまま、


海辺の細道を
トボトボと帰っていって
しまったのです…










かみね は、

ミューラー の 語る昔話の
つかみどころの無さ に、


ちょっと
どう反応していいのか
分からず、

無言で その顔を
見つめました…









話し終わった
ミューラー は、

また、とても遠くを
見るような目になり、


「柱のような岩」を、
翼で しずかに
なでるのでした。





当時の私は、

まだ、人間さんたちのような
知能や知識を持たない、
「ただの鳥」だったので、


『 そのとき ふきくん が
何をしていたのか? 』

など、

理解できませんし、

そもそも
考えもしませんでした…





でも、

キツネの おじいさん
選ばれて、

人間さんたちのような
「高度な思考」

与えられたとき…





『 あのときの ふきくんが、
何に あれほどのショックを
受けていたのか 』
…?

そして、

「あんなに必死に、
何をしようと
していたのか」
…?

を理解して、

とても 大きな驚き
得たのです。







そのときの驚きは、

そのまま 私自身の、

「人間」という生き物への
深い 尊敬の思い

となりました…





キツネの おじいさん は、

きっと こうなることを
知った上で、

私に この「役目」を
与えてくださった

のだと 思います。






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