| |
憶えてる? あんた、 あたしが この家に 来たばっかの頃 は、 あたしたちの 言うことに いちいち、 『それは違う!』 『そんなはずは無い!』 って… | |
| |
脊髄反射な「逆ギレ」 ばっか してたじゃん。 | |
言われてみれば、 あの頃の ふき と、 今の彼 とでは、 「感じているものが違う」 ように思えます。 以前の ふき が、 ネックたちの 指摘 に 対して 感じていたのは、 今まで 自分が 信じこんできた価値観を 否定されたこと への、 『怒り』のような 感覚 でした。 でも、 今 感じているのは、 シンシンと 胸に しみいるような、 『重い重い ショック』 なのです。 それは、 「ふき の 主張する しあわせ」 に対して ネックたち が 指摘してきた 数々の 矛盾点 が、 『たしかに 真実である』 ことを… ふき自身が、 少しずつですが 確実に 納得 し、 学んでいった 結果でしょう。 とはいえ、 「それだけに」… 「ネックたちの言葉が 真実であろうことが 予想できている」だけに… ふき の、今 感じている ショックも また、 以前のように 簡単には、 跳ね返したり、 脱したりできない、 なにか とても 『絶望的な 気持ち』に ならざるをえないもの があるのです… だから、 ネック が めずらしく 褒めてくれた にもかかわらず、 ふき の 心は、 晴れない のでした… そんな ふき を 見つめていた ミューラー が、 しみじみと、 深い ため息 を つきました。 | |
しかし… ふきくん が ショックを 受ける気持ちも、 無理ない ように 私も思います。 | |
| |
そもそも、 「 DNA の 生存本能 」 自体が、 『大きな矛盾』を 含んでいる とも 考えられる わけですからね… | |
|