■ ふき の悟りと、
ネック の告白(8/9)






DNA の 話を
初めて聞かされたときは、

『 自分が生きのびることが
一番大切 』 なんて、

すごく身勝手な思考
だと
ばっかり思っていたけれど…





冷静になって考えてみると、

むしろ、それは逆 だったんだね…


『 本当に真剣に、
自分の DNA を将来に残す
方法を考えるからこそ、

他人や世の中が、
切っても切れない、
ものすごく大切な要素だって
気づける 』
んだ。





今までの僕は、

「自分が生き残る」ってことを
真剣に考えていなかったから、

周りにも そんなに
関心が無かった
し、

他人のことも
軽視していた
んだなぁ…


自分をトコトン大事にした結果、
他人の つながりの大事さに
気づける
なんて、

今この瞬間も、
不思議で ならないよ…





話し終わった ふき は、
腕組みをして、

自分が発見した 「不思議」 を、
しみじみと再確認
しているようでした。



ネック・ミューラー・かみね は、
そんな ふき の姿に、

お互い、とても しあわせそうに
うなずき合うのでした。



    







そのとき ふと、ふき は、

ネック大切なこと
伝えなければならないのを
思い出し、

脇に置いてある
ペットショップの袋を
ガサガサと かき回しました。




えーと…

ところで、ネックさん?





ふき が 手にしていたのは、

帰りがけに買った

「愛らしいピンク色の
猫用の首輪」
でした。





もし 良かったら、

このまま ウチで、
いっしょに暮らしませんか?



公園でのノラ生活も
気軽でしょうけど、

ウチなら雨風も しのげるし、
冬とかも あったかいですから、

ネックさん の 生存確率も上がる
と 思うんですよね。





もちろん、

柱でツメとぎとか
されるのはアレなんで、

そこらへんは、もうちょっと
僕の言うことを
聞いてほしいというか、

妥協点を話し合っていきたい
とは思ってますけど〜?






そんなふうに 茶化しながらも、

ふき は 真剣に、

ネック との暮らしを
望んでいました。





この3ヶ月ほど、
ネック と 生活を共にしてみて、

ナマイキだけど、
物事の本質 を するどく見極める
彼女との暮らしは、

楽ではありませんが、

今までに無い、深い充実感を
ともなっていた
のです。





それに、

『 自分の子供を残し、
自分の DNA を未来に引き継ぐこと 』


が、生物の ほとんど 本目的
ようなものだと気づいたとき…



以前に、子供を残せない
ネック のことを

『 女モドキ 』 と あざ笑って
しまったことへの、
お詫びの意味も、

そこには、含まれていたのです。







[章の 目次 に戻る]