ネック は、 ふき から差し出された首輪を、 目を見開いたまま、 見つめ続けています… | |
な、なんか、 『 プロポーズ 』 みたいだなぁ… | |
ふき は 心の中で、 そんなふうに苦笑しました。 ネック は 前足で、 ふき の 手から そっと首輪を受け取ると、 とても 愛おしそうな目で それを見つめるのでした… ところが、 そんな ネック を 見ていた ミューラー や かみね の 顔に、 ふき が 帰宅した直後に 見せたような 重い表情が 広がりはじめたのです。 それに気づいて 戸惑っている ふき に、 突然、ネック が 頭を下げたのでした。 | |
えー… と。 ごめん、ふき! あたし、あんたに 『 隠しごと 』 してたんだわ。 | |
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…か、隠しごと?? | |
ふき の言葉に、 ネック は 申し訳なさそうに 目をふせて、 こう続けました。 | |
実はね… 私たち生物に、 『 生きる意味 』 なんて、 そもそも無い んだよ。 | |
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どんなに DNA を、 将来に残そうと がんばったところで、 『 ある意味 絶対にムダ 』 だってことが、 もう一部の人間には 分かっちゃってるらしいの… | |
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…え? …ど ど どういう事?? | |
ネック の この告白に、 ふき は 大きく混乱しました。 「DNA の生存本能」 を 理解するからこそ、 我々は 『 生きる意味 』 を 自覚し、 「より生存確率の高い世界を 作っていくという目標」 を 見出すことができる のでは なかったのでしょうか? それ自体が 『 ムダ 』 とは、 一体どういう事でしょう…?? しかし、 ふき の 本当の衝撃は、 ネック の もう1つの 告白のほうにこそ あったのです。 この時の 絶望的なショック を、 きっと ふき は、 生涯忘れることは ないでしょう… | |
あとね… あたし、『 ガン 』なんだわ。 多分、あと 半月ぐらいで お別れになると思う。 だから あんたとは、 「家族」 には なれないの。 ごめんね、ふき … | |
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