■ ふき の悟りと、ネック の告白(9/9)






ネック は、

ふき から差し出された首輪を、

目を見開いたまま、

見つめ続けています…









な、なんか、

『 プロポーズ 』 みたいだなぁ…





ふき は 心の中で、
そんなふうに苦笑しました。




ネック は 前足で、

ふき の 手から
そっと首輪を受け取ると、

とても 愛おしそうな目で

それを見つめるのでした…











ところが、

そんな ネック を 見ていた
ミューラーかみね の 顔に、


ふき が 帰宅した直後に
見せたような

重い表情が
広がりはじめた
のです。


  





それに気づいて
戸惑っている ふき に、

突然、ネック
頭を下げたのでした。





えー… と。

ごめん、ふき


あたし、あんたに

『 隠しごと 』 してたんだわ。





…か、隠しごと??





ふき の言葉に、

ネック は 申し訳なさそうに
目をふせて、

こう続けました。






実はね…

私たち生物に、
『 生きる意味 』 なんて、

そもそも無い
んだよ。





どんなに DNA を、
将来に残そうと
がんばったところで、

『 ある意味 絶対にムダ 』

だってことが、

もう一部の人間には
分かっちゃってるらしいの…






…え?


…ど ど どういう事??





ネック の この告白に、

ふき は 大きく混乱しました。



「DNA の生存本能」
理解するからこそ、

我々は 『 生きる意味 』 を 自覚し、

「より生存確率の高い世界を
作っていくという目標」 を
見出すことができる
のでは

なかったのでしょうか?




それ自体が 『 ムダ 』 とは、

一体どういう事でしょう…??






しかし、

ふき の 本当の衝撃は、

ネック の もう1つの
告白のほうにこそ
あったのです。




この時の 絶望的なショック を、

きっと ふき は、

生涯忘れることは
ないでしょう…





あとね…

あたし、
『 ガン 』なんだわ。


多分、あと 半月ぐらいで
お別れになると思う。

だから あんたとは、
「家族」 には なれないの。


ごめんね、ふき








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