ふき は、 大きなショック の中を ただよいながら、 ネック の 語る、 「3ヶ月前の話」を、 聞き終わりました。 この、 ちょっと イヤミくさいけれど、 どこか 中性的な さわやかさ を 持った白猫が、 すでに『ガン』に おかされている… そして もうすぐ、 自分の前から… それどころか、 この世の中の どこからも、 キレイさっぱり いなくなってしまう… それは まったく 信じがたい、 信じたくない 事実 でした。 そんな ふき の、 うつむいたホロ苦い顔に 気づいた ネック は、 ちょっと 困ったように ほほえんで、 鼻で ため息をつきました。 | |
そーんな シケたツラ してんじゃないわよ、ふき。 あー、はいはい。 じゃ、その『 首輪 』、 もらっときましょ? ほれ、とっとと あたしの首に 着けてみなさいよ。 | |
そう言って 首を伸ばしてくる ネック に、 ふき は ちょっと ふるえる手つきで、 ピンクの 愛らしい首輪 を 巻いてあげたのでした。 | |
どれどれ? キュートな あたしが、 さらに どんだけ キュートになったかしら〜? | |
そんな事を言いながら、 軽やかに鏡の前に 歩いて行った ネック は、 その中に映っている 自分の姿 を 見たとたん、 それまでの軽口が プッツリと止まったのでした… | |
…へえ。 こんな なんだ… …ふーん。 | |
そんな よく分からないことを つぶやきながら、 ネック は 鏡の中の自分を、 恥ずかしそうに チラチラと 眺めつつ、 首もとの 首輪を、 愛(いと)おしそうに 何度も なでています… ふき は もちろん、 ミューラー や かみね も、 普段はサバサバしている ネック が 見せた、 少女のような意外な反応 を、 寂しくも、ほほえましく 見つめたのでした… |