事実、 引き抜き や 中途採用 で この会社にやってきた 実力あるプランナーたちが、 上層部の一方的な指示に したがうだけの日々に、 嫌気が さしたり、 疲弊しきって、 ほぼ1年と もたずに、 また 他社に去っていく… そんな さびしい光景を、 そろそろ「古株」に 仲間入りしつつある ふき は、 本当に 数多く 見てきたのでした。 | |
…でも。 | |
…と、 同時に ふき は、 考えます。 でも、 ならば 今の自分に、 本当に この会社を 「批判」する権利が あるのだろうか? たしかに、 今の うちの会社は、 「ゲームへの愛」など お笑い草で、 他社のヒット作への 敬意も はらわずに ただ そのアイディアを 拝借して、 利益をかすめ盗って いるような 卑怯な会社ですが… その会社から 生活費をもらって 生き延びているのが、 他ならぬ 今の、 『ふき自身』なのです。 それを考えると、 ふき は 自分の心が、 黒くドロドロした 沼の中に、 少しずつ… でも 確実に、 ズブズブと 沈んで いきつつあるような… そんな 得体のしれない不安 を 感じずにおれなく なるのでした。 |