■ あの日、ふき が見たものは 3

僕らは まるで…(7/9)





今は まだ、

そこそこ
海水が たまっている

状態ですし、

今日のような
曇り空の日がつづけば、

しばらくは
大丈夫でしょう。




しかし、

天気が回復し、
太陽が顔をのぞかせる
ようになれば、

これっぽっちの海水、

ものの数日で
蒸発しきってしまう

はずです。






また、「満潮」
毎日のように
おきていますが…


日常の
おだやかな波では、

とても とても
この石柱の てっぺんの
「くぼみ」
まで

海面が届くとは
思えません。





つまり、
このまま放っておくと、

この子たちは
高確率で全滅してしまう
運命にあるのです!








ふき は 大あわてで、
背おってきた
リュックをおろし、

中から「コップ」
取り出しました。



そして、

「くぼみ」に取り残された
小魚たちを、
なんとか救い出そう
と、

懸命に水の中で
手を動かしたのですが…




そんな事情を
まったく知らない
小魚たちは、

突如として
この『 平穏な楽園 』を
荒らしはじめた
巨大な容器

恐れをなし、



ある者は 水中深くへ、

ある者は
小さなヒビワレの
隙間へと、

一目散に 逃げ散って
しまうのでした。










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