30分ほども、 そうやって「くぼみ」と 格闘したでしょうか…? 最後のほうは もう 疲れきって、 小魚がコップの中に 入っていようが いまいが 関係なしに、 半狂乱になって 「くぼみ」の中の海水を 外に かき出していた ふき でしたが… 今の自分には、 もう この小魚たちを 救えないと 判断したのでしょう。 今度は逆に、 波打ちぎわに降りて 海水をくんでは、 それを「くぼみ」の中に つぎ足して、 可能なかぎりタップリと 海水をたたえさせた のでした。 せめて、 この海水が無くなる前に、 季節外れの嵐が、 再び訪れてくれる ことだけを祈って… その日の夕方、 ふき は、 海辺の細道を、 トボトボと力なく、 駅に向かって 歩いていきました… その足取りは、 ここに来るまでの 10倍は重く、 沈痛でした。 |