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『ふき』… | |
かたまっていた ネック が、 そんな名前を つぶやきました。 | |
「ふき」だよ… あれ「ふき」だよ。 ウソみたい… 元気だったんだね! | |
言うが早いか ネックは、 「ふき」という青年の 足元に向かって、 普段 見せたこともないような すばらしい速さ で 駆け寄っていきました。 | |
ふきっ! | |
ネック の そんな呼びかけは、 ふき を 含む人間たちには、 もちろん、 「にゃあ」としか 聞こえません。 | |
懐かしいね、ふき! なんで長いこと 会いに来て くれなかったの!? | |
ネック の 白い体が、 ふき の 足元を なでるように、 スルリスルリと 美しく回転しています。 | |
仕事が 忙しかったとか? それか もう、 『将来の夢』ってやつを かなえちゃったわけ? | |
自分の頭をウリウリと ふき の 足元に すりつけつつ、 ネック は キラキラとした目で 彼を見上げたのですが… そのときになって、 ようやく ネック も、 ふき の 様子の おかしさ に 気がつきました。 ふき は、 ほほえんでいたのです。 でもそれは、 とても寂しげな、 心の真ん中の ぬくもりを どこかに落としてきて しまったような、 力ない、 泣き笑いのような、 笑顔 でした。 |