『自殺』という 悲しい決意を 忘れさった ふき が、 先ほどの木のベンチに 座らされ… ネック も、 彼の そばに チョコンと座ります。 | |
…あっ と。 そうだ、じいさん。 | |
ネック が ハッと気づいて、 神さま を見上げました。 | |
ついでで 悪いんだけど… ふき の 記憶の中から、 「あたし」についてのものも 消しといて もらえないかなぁ。 | |
ネック の この言葉に、 神さま は 驚きました。 | |
『3つ目の願い』に 関連するのであれば、 出来んことはないが… 本当に それで良いのか? | |
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うん。 ふき が 『本当の生きる意味』に 辿りつくまでは、 あたしは 「なつかしの かわいい白猫」 じゃなくて 『厳しい教師』のほうが 良いと思うの。 | |
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「感動の再会」 ってやつは、 ふき が すべてを 思い出したとき… 思い出すべき 『その時』が来るまで、 とっとこうと 思うんだよね。 | |
たしかに、 「かつて なじみのあった 普通の子猫」が、 今になって 急に 人間の言葉を 話し出すよりも、 最初から 『人の言葉を話す猫』 として いきなり ポンと 出会ったことに しておいたほうが、 ふき も 「納得」しやすいというか、 「良い意味で 開き直れる」 かもしれません。 神さま は うなずいて、 あらためて ふき の額(ひたい)に 手をかざし、 彼の「ネック との 懐かしい思い出」に、 一時的なフタ を ほどこしました。 |