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第11章『人間は、地球最後の「はかない希望」』→ 地球生物が 生き残るために、 『しあわせ』を どう活用するか? |
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地球生物が 母なる地球から 旅立つ ため、 『高度な宇宙航行を 可能にするほどの、 飛躍的な文明の発展』 を 目指して、 既存の「しあわせ」を 考え直す… |
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今回 お話しするのは、 その 最後の要素… 『健康』について ですね。 |
ミューラー が、 ここまでの道のりを 振り返って、 しみじみと そう語りました。 ちなみに 今日の話し合いには、 ネック は 参加していません。 ![]() キツネの おじいさん の力で 「ガンの痛み」は 無くなっても、 決して 「健康」になった わけではない ネックは… 時々 こんなふうに 疲労が あらわれて、 寝室で横になることが、 最近は 増えている のです。 | |
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僕は『健康』も、 「文明の発展」には 絶対不可欠 だと思うなぁ。 |
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健康でなくちゃ、 「学校」も「仕事」も 「趣味」も「人間関係」も、 どうしても 全力投球ってわけには いかなくなる し… |
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自分の体に 不安が無い からこそ、 色んなことにも 積極的になれる んじゃないかな。 |
「学校も 会社も 病気も なんにもない」神さま である かみね も、 その話は 分かる気がします。 ![]() 自分の体が、 (病気やケガ・障害などで) 自分の思う通りに動かない 状態 というのは、 想像するだけでも 怖いものです。 ![]() 特に、 ミューラーたちのような 野生動物 は、 その日その日を 生き延びるのが 精一杯なので、 「健康を害すること」 イコール 『死』に 直結する ケースが多く… ![]() 理屈では 分かっていなくても、 「健康であること」 への 渇望 は、 きっと、 人間の それとは 比較にならないほど強い ことでしょう。 | |
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私も、 『健康』であることの 重要性 は、 本当に深く、 実感せずにはおれません。 |
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ただ… ネックさんと お会い し、 「人間さん」たち というものを 学ばせていただいた ことで… |
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『健康』は、 文明の発展において 「必要条件」 ではありますが、 『絶対条件ではない』… と 考えるように なりました。 |
ミューラー お得意の 「難解な言葉」に、 またも かみね が うろたえましたが… ![]() ふき は 何となく、 意味を理解したようです。 ![]() |
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「健康」であることも 大事 だけど… 『それだけでは 文明は発展しない』 という事ですね? |
ミューラー が、 深く うなずきました。 | |
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その通りです。 そもそも 「健康」というものは、 とても 『個人的なもの』 です。 |
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健康であることで、 「その本人」の 生存確率は もちろん上がります が… それ以外の人々の 生存確率の向上 (文明・社会の発展)に その人の欲求が 向くかどうかは、 また 別問題 です。 |
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むしろ 健康である せいで、 「自分の力だけでも、 人生なんとかなる!」 といった 勘違いや 思い上がりを起こして、 『他者との協力の重要さ』を 軽視するように なってしまう かもしれません。 |
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「健康」であることが、 かえって 生物さんたちの結束を 壊してしまう… という事でしょうか?? |
ビックリしている かみね に、 ミューラー が 「いえいえ」と ほほえんで 首をふりました。 | |
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もちろん、 そこまで極端なケース ばかりではない とは 思います。 |
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ただ、生物は、 『自分の弱さ』を 認める ことで、 「他者との協力の 大切さ」 に 気づきますし… |
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『自分の命に 限りがある』 と 自覚する からこそ、 「自分の DNAを 子供に託し、 自分の得た知識を 次の世代に残すことの 重要性」を 認識するのです。 |
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「病気やケガ・障害」 (健康ではない状態) というものは、 生物に 『自分の死』を 部分的・疑似的に 体験 させ… |
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「自分の弱さ」や 「命に限りがあること」を 再認識 させてくれる、 とても重要な経験 だと、 私は思うように なったのです。 |
ミューラー の この言葉に、 ふき や かみね も ハッと気づきました。 ![]() ![]() ネックさん… ![]() あの白猫が、 ふき に 『生きる意味の正体』を 伝えようとした理由は、 「自分が ガンになったから」 でした。 あの 公園 で、 ノンビリと 人間たちから 食べ物をもらったり、 人間たちの独り言を 聞いたりしながら 暮らしていくものだと、 信じて疑いもしなかった 「自分の人生」が、 ある日 突然、 「ガン」によって プッツリと絶たれてしまう と 知ったとき… ![]() ネック は、 せめて、 これまで つちかった 『自分の知識』、 『自分の心』を、 ふき の 中に 遺(のこ)そうと 決意 しました。 ![]() 「健康」を 失って はじめて、 ネック の 中に 『自分自身の 生きてきた意味』 と 真剣に向き合う覚悟 が 生まれた… ![]() ある意味、ネック の 「本当の人生」は、 健康を無くした瞬間から 始まった とも 言えるのです。 ![]() ![]() |
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たとえば もし、 『永遠の健康・永遠の命』 を 持つ生物が いたとしたら… |
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その生物は、 「決して他者と 協力し合うことは無く」、 「文明や社会の発展に 貢献することも無い」 でしょう。 |
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なぜなら その生物は、 『自分という存在だけで、 永遠に生きていける』 からです。 そこには、 「他者との協力」の 必要や欲求は 皆無 なのです。 |
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逆に、僕ら 「普通の生物」は、 病気もすれば ケガもする… この命も、 いつか 終わっちゃう… |
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それが 悲しくて 怖い から、 「いつまでも 自分の DNAが のこる方法」を、 必死に探そうとする… |
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それが 結果的に 生物さんたちの中に、 『他の生物と 協力して、 高度な文明や社会を 作り上げたい!』 という 強い気持ちを 生み出すのですね? |
ミューラー が、 とても うれしそうに 何度も うなずきました。 | |
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その通りです。 行動する上では 「健康」は とても 大切ですが、 「自分の生き方(心)」 の 方向は 『死』を意識しないと 見えてこない… |
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『健康という しあわせ』は、 失うことでも、 より深い「しあわせ」を 見出すキッカケになる 場合がある、 とても不思議なもの なのです。 |
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もちろん、 「だから、病気や障害を持つ 人のほうが、人間的に立派」 と言うわけでは 決してありません が… |
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「健康」と 「健康ではない」という、 2つの面 を 経験している人のほうが、 『視野が広い』のは 間違いないのでは ないでしょうか? |
語り終えた ふきたちは、 ネック の 寝ている 部屋のほうを、 見つめました。 ![]() ![]() ![]() このまま 二度と、 「健康」を 取り戻すことなく 生涯を終えてしまう 白猫… でも 彼女は、 「健康」という しあわせ を 失ったことで、 『自分の心』を 誰かの中に のこす という、 新たな しあわせの道 を 見出したのです。 ![]() 『生きる意味』 というものの不思議さ に、 ふきたちは 改めて、 ただただ 感嘆する ばかりでした… ![]() ![]() ![]() |