サイト『生きる意味の「正体」教えてやるにゃー』→
第11章『人間は、地球最後の「はかない希望」』→ 生物が生き残るためには、『詐欺師』の撲滅が不可欠 |
| |
あのさぁ、ふき… ちょっと「お願い」が あるんだけど… | |
ネック が 珍しく小声で、 ふきに そんなことを 言いました。 今日は 珍しく、 ミューラーも かみねも 出かけていて、 家にはいません。 というか、 ネック は そのタイミングを 狙って ふきに 声をかけてきた ように思えます。 | |
ど、ど… どうしたの? ネックさん。 | |
普段と違う ネックの 雰囲気に、 ふきも ちょっと 緊張しました。 | |
えーと…… その… ね…… | |
| |
な、何も言わずに 「10万円」 貸してくんない? | |
ふきは しばらく、 口あんぐりで ネックの 顔を 見つめました。 10万円ぐらいなら、 ちょっと無理すれば 用意できなくは ありません。 でも、 猫である ネック が、 それを 何に使うと いうのでしょう? 「貸して」も 何も、 猫ですから 「働いて返す」ことも できません。 「何も言わずに」 という 言い回しも、 どこで おぼえたんだか…?? 緊張していた分、 反動で バカバカしくなった ふき は、 「何に 使うつもりなのか?」 「それを教えてくれれば、 内容によっては、 貸すんじゃなくて、 差し上げてもいいですよ?」 といった事を、 少し 怒りぎみに ネックに 伝えたところ… ネック は、 怒ったような、 それでいて 困ったような顔 になると… | |
ふ、ふーんだ。 じゃあ いいよ! ふき の バカ! | |
と 言って、 小走りに 去っていったのでした。 |
その夜 ふきは、 ミューラーや かみねに その事を グチりました。 当の ネック は、 夜の散歩に 出かけていて、 留守 です。 ところが、 その話を聞いた ミューラーが、 突然 深刻な面持ちに なってしまった のです。 | |
実は ふきくん… ちょっと 見てほしいもの が あるのですが… | |
ミューラー は、 ふきや かみねと ともに パソコンの前に来ると、 慣れた手つきで インターネットの画面 を 開きました。 (相変わらず くちばしで キーボードを叩くので、 ふきは パソコンが 壊れやしないか ヒヤヒヤでしたが) 出てきた画面は、 意外にも 『某サプリメント会社』の ネット通販用サイト でした。 この会社は、 たしか 数年前、 「効果の無いサプリ」を 有名芸能人を使用した 大々的なCMで 大量に売りさばき、 多くの被害者から 『詐欺』として訴えられた にもかかわらず… サッサと 前の会社をたたんで、 シレッと 新会社で 「同様の商売を継続」 している、 筋金入りの 『詐欺集団』です。 ミューラー が 画面を進めると、 そこには、 『ガンに効くキノコ!!』 の文字が デカデカと踊り、 「半信半疑で飲みはじめたサプリで、 ガンが消えた!!」 「今まで色んな薬にダマされてきたが、 最後に出会ったこの会社の サプリだけは本物!」 「信じて良かった!! 健康って、素晴らしい!!!」 といった、 体験談(真偽不明)が、 体験者の 顔写真 (本人かどうかは不明) の 満面の笑みとともに ズラズラと 並んでおります。 キノコの効果を 誇示するためか、 『ガンが消えるキノコを、 今だけ 無料体験パック』 (3日分。初回限定) を 申し込めるフォームも 設置されていますが… その横に 堂々と 『短期間の服用では、 効果は 現れません!!』 (最低でも「2週間」は、 続けて ご服用ください!) と 書き添えられており、 | |
む… 矛盾 してますよね? | |
と、かみね も、 苦笑するばかりです。 そんな ふきたちの反応を 見つめていた ミューラーが、 続けて、 画面を さらに下に スクロールさせると、 そこに表示された 『キノコ 2週間分セット』 の 値段は… | |
10万円… | |
パソコンの 椅子の上から ふきを 振り返っている、 ミューラー の 困ったような寂しそうな目 にも 気づけないほど、 ふき は、ショックで 固まったまま、 インターネット画面を 見つめ続けました。 ミューラー が ふきたちに 見せたのは、 ネック の インターネット閲覧ログ でした。 ネック は、 最近 ようやくおぼえた パソコン で、 こんなことを調べ、 こんなものを 見てしまっていたのです… |
その夜、 帰ってきた ネック に、 ふきたちは とてもつらい説明を しなければ なりませんでした… こうした、 「薬でも治らない病気が、 特殊な食べ物で完治した!」 といった宣伝をされている 健康食品などの商品 は、 『まず 100% 詐欺である』と… でも それは、 『ネックの ガンは、 もう 絶対に治らない』 という 悲しい事実を、 ネック自身に あらためて 再認識 させることも同然 でした… ささやかな希望 を 見つけたような気に なっていた分、 ネック の 落胆は 本当に大きいものでした。 普段、あれだけ ヒョウヒョウとしていた 白猫ネックが、 最後の最後まで、 | |
あの「無料 体験分」 だけでも、 飲んで 試してみたいな… | |
| |
ねぇ ふき、 一生の お願い… あれだけでも 申し込んでよ。 | |
と、 ふきの 袖をつかんで 上目づかいで 寂しそうに 頼んでくるのです… ネックの そんな姿を 見つめながら、 ふき は 生まれて初めて、 つらすぎて 嘔吐しそうになりました。 『あの詐欺会社を、 関係者もろとも 爆破してよい』 と 法律が許すのであれば、 (許すはずもありませんが) ふきは この瞬間、 何のためらいも無く 冷静に、 起爆スイッチを 押していたことでしょう… |