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第0章『白猫ネックと 出会った日』→ 記憶をなくした会社員「ふき」 |
つぶやいた ふき の 視線の先… 暮れていく南の夕空 の 中に、 少し明るい星が ナナメに3つ、 行儀よく並んでいるのが 見えます。 | |
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あれは、 『オリオン座』です。 「オリオン座」は、 夜空で最も明るい部類である 「1等星」を 2つ、 それについで明るい部類の 「2等星」を 5つも持つ、 とても明るく 美しい、 冬の代表的な星座の1つ なのです。 子供のころは、 お小づかいをためて買った 「天体望遠鏡」を片手に、 星空を眺めてまわった ふき でしたが… 最近は 仕事の忙しさ などで 疲れはて、 ゆっくりと 夜空を見上げる 心の余裕も、 すっかり 無くなってしまって おりました。 でも、今こうして なつかしい星座 に 再会して、 なにか、 旧友に出会ったような おだやかな心地 が 広がり… ふき は、先ほどまでの 「漠然とした不安感」が、 サラサラと崩れて 消えていくように 思えるのでした。 …と、その時、 ふき は 何かに気づいて、 自分の脇を 見おろしました。 自分の座っている 同じベンチの上… 自分の すぐ隣 に、 小さな白いメスの野良猫 が、 チョコンと座って、 彼のほうを 見上げていたのです。 |