■ 「物」 は、無常である






先日、お金 について
ダメ出し(?)を食らったので、

その延長でもある 『品物』
人生の幸せと主張するのは、

さすがに ふき も、
自信が無かったのですが…








思い返してみると、
あのとき ミューラー は、

「お金は、価値が変動する
ところがあるから怖いです」




と 言っていました。






一方で品物は、一度買ってしまえば
自分だけのものであり、

自分の中の考えが変わらないかぎり、
(その品物に飽きたりしないかぎり)
価値は変わらないはず
です。




「結構いけるのでは?」






そう考えた ふき

『物をたくさん持ってる自分は幸せだよね?』

と、今回は主張してみたのですが…




ミューラー の回答は、

「お金」のときと
似ているような違うような、

とにかく、以下のような感じでした。








品物は、日々を快適にすごすための
道具には違いないですが、


人生の目的…

「しあわせ そのもの」 とは、
言えないと思うのです。





その理由の1つとして、
品物は必ず壊れてしまいますよね?


命や、お金の価値にも、
もちろん そうした面はありますが、

日々使っている品物ほど、
「いつか壊れる・無くなる」 という未来を
容易に想像できるものはありません。





このような、概念… 真理を、

たとえば仏教では、
『無常』 と称しています。





「無情」…?







ふき のキョトンとした顔を、
彼の足元から見上げていた白猫は、

察して、「ふふん」 と鼻で笑いました。






あんた まさか、

心が冷たいって意味の 「無情」
勘違いしてんじゃないの?



そうじゃなくて、
無常よ、
『無常』


「どんな物事にも 永遠なんて無くて、
いつか必ず終わりが来る」
って意味ね。


そんなことも知らないんだ?







「バッカじゃない? あはは」




そんなふうに ネック に笑われて、
頭に血がのぼった ふき は、

彼女を見おろしながら、
精一杯 憎らしい笑みを浮かべて

こう言い返しました。






あー、なるほど。
そっちの 「ムジョウ」 でしたか〜



いやー、失敬失敬。

ここしばらく、
『無情』 な誰かさん といっしょに
暮らしているもんで、

つーい、そっちの意味かと
早合点してしまいまし グゲッッッ







ネック は、もはや恒例のように、

ふき の弁慶の泣き所に
一閃し終えた自分のツメに、

フッと息を吹きかけ、
ゆっくりとしまい、


ふき は その痛さに、
床を転げまわって悶絶しています。


  







そんな 2人のやり取りを、
唖然として見ていた ミューラー は、


「ま、まあ、それは さておき…」



という感じの空咳を
「コホン」 と1回入れて、

話を再開します。







そうです。

ネックさんが
おっしゃられたほうの
『無常』 です。



物は必ず壊れてしまいますし、

「お金」 といっしょで、
あくまで自分の人生の幸せを
ある程度コントロールする
道具にすぎません。





それを手に入れることが
主目的になってしまっている生き方は、
ちょっと 「しあわせ」 とは言い難く…


結局 これも、

「生きる意味」そのものではない
と考えられるのではないでしょうか?








ネック「うんうん」 とうなずいて、

ミューラー の後を継ぎました。







そーよ、ふき

あんたの この部屋は、
たしかにいろいろ物があって
便利だし 楽しいけど、

この部屋に物をそろえていくだけが
あんたの人生の目的なんて、
バカみたいじゃん?


『それを使って、何をするか?』

が大切なの。



物に囲まれたいなら、
ホームセンターの店員さんにでも
なりなさいよ。









「ホームセンターの店員さん」 は、

商品 に囲まれているのであって、
自分の持ち物 に囲まれてるわけじゃ
ないでしょうが?









…と言いたかった ふき でしたが、

ネック のするどいツメの一撃を
1日に2回以上食らう危険性を考えると、

さすがに怖くて、
言い出せませんでした。





それに、今の ネック の言葉には、
確かに うなずけるものがあります。









そんなふうに、
真摯な気持ちになっていた
ふき でしたが、


直後の ネック の言葉が
彼を逆なでしました。







ちなみに、あたしが
あの壁でツメとぎしたのも、

あんたに 『無常』 を教えるために
わざと やったことなんだからね?


よーっく、感謝すんのよ?





うそだ! あれはあんたが
欲望にまかせ…










案の定 ふき は、
全部を言い終わらないうちに、
痛さで床を転げまわって悶絶し、


ネック は、自分のツメにフッと息を吹きかけ、
静かにそれをしまいました。


  







そんな2人を見つめながら、

「とほほ…」 といった感じに
肩をすくめる ミューラー でした。








品物は、あくまで
道具とか、人生のアクセサリー
すぎないの。

「人生の目的 そのもの」
ってわけじゃ無いのよね。



そこんとこ、
勘違いすんじゃないわよ?





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