■ 「学歴」 は、ガマン大会の賞品? (1/3)





そういえば、ふき

あんたが あたしをつれて帰った日に、
公園で、あんた言ってたよね?

「新人たちの教育がメンドウだ」って…





1ヶ月ほど前、

まだ ネック
人間の言葉が分かる猫だと
知らなかった ふき は、

「言葉が分からない相手」
だからこそ安心して、

そんなグチをこぼしたのでした。






そうなんすよ、ネックさん…


あいつら、
いつまでも学生気分が
抜けないっていうか、

全然 自分から
動こうとしないんで、

もう 「やれやれ…」 って感じで…





まあ、あんたみたいな
バカ
上司に持たされた その子たちも、

憐れっちゃ 憐れだけどね。







薄ら笑いを浮かべる ネック と、
食ってかかろうとする ふき を、

「まあまあまあ…」 と、
軽く仲裁に入る ミューラー





このトンビ紳士も、
だいぶ ふきネック の扱いが
分かってきたようです。







学生さんたちには、
初めて社会人になった
戸惑いもあるでしょうし、

そもそも 誰でも、
どんな年齢になっても、
「新しい会社・団体」 というものには
慣れるまでの期間があるもの
です。



それを責めてしまっては、
彼らもかわいそうではないでしょうか?






そう言われてみると、

ふき も入社直後は、
わずか数ヵ月先に入社していた
直属の先輩(上司)に、

ずいぶん理不尽なことで怒鳴られ、
イヤミを言われた憶えがあります。



新人くんたちの目には、
自分が 「あのときのイヤな上司」
のように映ってるのでは… と考え、

ふき は、少しヒヤリとしました。











ただ たしかに、

学生と社会人のやり方が
あまりにも異なっているのは、

学歴社会の大きな弊害 ですよね…






先日 ネック に、

自分の 「学歴」 を
人生のしあわせの1つ
自慢した ふき としては、

聞き捨てならない一言だったので…



「そ、そんなに違いますかね??
ミューラーさん。」





と、あわてて、
否定しようとしたのですが、





違うに決まってんじゃん。


だから あんたも、
『新人教育』 やって、

学生くんたちを 社会人に改造
しようと必死になってるんでしょ?





と、即座に ネック に突っこまれ、

言葉につまってしまいました。









大ざっぱに言いますと、
日本の学校というものは、

『高い記憶力』 さえあれば、
高得点がとれる
ようになっています。



いろいろな勉強法が
世の中にはありますが、

それらの中でも 「記憶術」
ありがたがられているのも、

その証拠の1つではないでしょうか?







そういえば、先日 ふき が見た
テレビのトーク番組 「ヤメトーーク」 でも、

高学歴のお笑い芸人たちが
自慢していた勉強法のほとんどは、

『いかに効率的に記憶するか』

についてのものでした。







逆に、会社… 社会というものは、

基本的に、世の中の大多数の人間を
相手にするものですから、

決まりきった 「ベスト」 のパターンは
まず存在しません。




その場の状況を的確に把握し、

今までの自分の経験と学びの中から、
最も 「ベター」 と思われるものを
選択しつづける
ことで、

生き残り、勝ちあがっていく世界
と言えるでしょう。






ま、「競争して生き残る」ってあたりは、

人間も、あたしたち動物と
仕組みはいっしょだわね。







「動物といっしょ」 などと言われると、
ちょっとカチンと来る ふき でしたが、

すぐには うまい反論も
思いつかなかったので、

とりあえず白猫の この発言は、
スルーすることにしました。










『記憶』 も、もちろん
大切な脳の機能の1つですが、

あくまで 「機能の1つ」 です。



こればかりが特化してしまうと、

決まったパターンばかりを
重視するようになってしまい、

『状況を見て、臨機応変に対応する能力』
が、育ちにくくなってしまいます。







ふきくん は先ほど、
新人さんたちのことを

「自分から動こうとしない」
と評していましたが…


それはつまり 学生さんたちが、

『臨機応変な対応という面で、
社会人に比べて能力が低い』


からではないでしょうか?







もちろん、学生さんたちにとっては、
初めての社会人としての職場ですから、

自分の判断で勝手に動いて、
もし大きな失敗をしてしまったら、

上司ににらまれたり、
会社をクビになってしまうような
事態になってしまうのでは…



という心配もあって、

やや過剰に、
前に出るのをためらっている面もある

とは思われますが…








言われてみると、
それもヒシヒシと分かる気がします。



ふき だって、

学生時代にガマンにガマンを重ねて
学校に行き続け、

いくつもの受験を半狂乱で突破し、

面接で たくさんイヤな思いをして、


ようやくようやく
今の会社に就職した
のです。




それを、ちょっとした失敗が原因で、
クビにされてしまっては、

悔やんでも悔やみきれません…





今までは、

「これだから新人は」 とバカにして、
優越感にひたっていた ふき でしたが、

新人くんたちが
慎重になる気持ちも分かってきて、

「ちょっと自分の新人教育の仕方も
考えなおしたほうが良いのかな…」




と、腕組みをしていたところ…






…ていうか、

ふき が前に言ってた、

『高校や大学に、長くガマンして
行き続けている人間のほうが立派』


っていう考え自体、
根っこから おかしいよね。





と言われ、

今まさに 「学校にガマンして
通い続けていた当時」
のことを
思い出していた ふき は、

ギョッとして、
5センチほど飛び上がって
しまいました。










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