サイト『生きる意味の「正体」教えてやるにゃー』→
第2章『それって、しあわせ?』→ 将来の『夢』が あれば、本当に しあわせ? |
| |
![]() |
ねえねえ、ふき? ミューラー が 「アイディア 見せて」 って 言ってるよ? |
| |
![]() |
あたしも ぜひ 見てみたいなぁ。 あんたの 『大傑作』の 原石 ってやつを さ。 |
ふき は 困惑した顔のまま、 自分の机 に 歩いて行きました。 ![]() そして、 何度か ためらいながら 引き出しを開け、 中から 「大きな封筒」を 取り出し… 何度か ためらいながら、 ネック と ミューラー の もとに戻って、 その中身を 床に広げたのでした。 中から出てきたのは、 大量の 細かいメモ用紙 … それらのメモ 1つ1つには、 断片的な ゲームアイディア が 走り書いてあります。 …ところが、 どこを探しても、 「それらのアイディアを まとめたもの」が 見当たらない のでした。 | |
![]() |
…あの、ふきくん。 これで 全部 でしょうか? |
不思議そうに たずねる ミューラー に、 ふき が、苦しい顔で うなずきました。 ![]() | |
![]() |
これを 「開発の 皆さん」に 見せると、 ゲームを作ってもらえる のでしょうか…? |
重ねて聞く ミューラー に、 ふき は 先ほどより さらに苦しそうな顔で 首をふりました。 ![]() | |
![]() |
なによ これ? ま〜だ ぜんぜん 「形に なってない」 じゃないの。 |
ネック に 急所を突かれて 肩が ビクン と ふるえた ふき でしたが、 弱々しくも 必死の反論を試みます。 | |
![]() |
い、いや。 『オレの 頭の中』では、 ある程度 構想は、 まとまってる んですよ? |
| |
![]() |
でも 今は、 毎日 仕事が忙しくて… 「時間」さえ、 「時間」さえあれば… |
| |
![]() |
でも、ふきくん の 頭の中にあるという 「ゲームの構想」は、 「言葉だけで」 スタッフの皆さんに 伝わるのでしょうか…? |
| |
![]() |
それに、 ふきくんの 仕事に、 今後 「時間的余裕」が できてくるという保証は…? |
心配そうな ミューラー の 言葉に、 結果的に さらに 痛い所を突かれ て、 ふき の 顔面は、 これまでになく、 深く 青黒く なっていくのでした。 ![]() | |
![]() |
うん、まあ、 とりあえず よく分かったわ ふき。 あんたが 「しあわせだ」って 自慢してた 『夢』ってのは… |
| |
![]() |
形になるかどうかは 「二の次」で、 「成功した自分」を 妄想してニヤニヤして、 ちょっとの間、 『今のミジメな自分』から 目をそらすための 代物 …て とこかしら? |
| |
![]() |
「宝くじ」とかと どこが違うのか、 説明してほしい んですけど〜? |
ネック は、 そんなイヤミを言いながら、 ふき の 顔を のぞきこみました。 当の ふき は、 白目をむいて 気絶しておりましたが… ![]() ![]() ![]() |
| |
![]() |
あー… まあ、 あたしにも 言いすぎなとこが あったかもしんないけど、 あんたも 気絶 なんか してんじゃないわよ、 ふき。 |
ネックは、 目覚めて、ようやく 落ち着いた ふき に、 そんな 反省のような 文句のような 言葉 を こぼしました。 ![]() | |
![]() |
しかし… ふきくん の お持ちの「夢」、 実現までの道は まだまだ 遠そう ですね… |
ミューラー が、 とても残念そうに 首を左右に振っています。 | |
![]() |
ただ、今回の件で、 私が 「人間さんたちの夢」 について勉強 していたときに感じた 『違和感』の 正体が… ちょっと 分かったように 思います。 |
| |
![]() |
…い、違和感? |
トンビ紳士の 発した言葉に、 うなだれていた ふき が 頭を上げました。 | |
![]() |
はい。 私は当初、 人間さんたちの 「夢」というものは、 『自分の将来に向けての 目標』なのだと 考えておりました。 |
| |
![]() |
「夢」という 『具体的な 目標点』を 設けることで、 人生という 広大なフィールドを、 アテも無く 闇雲にウロつく といった愚行 を 回避し、 「限りある時間(寿命)」を 可能なかぎり有効活用 する… |
| |
![]() |
そのための 手段・知恵 であると、 解釈していたわけです。 |
ここで ミューラーは、 ちょっと 寂しそうな顔 に なりました。 ![]() | |
![]() |
ところが、 ふきくんの家で 暮らすようになり、 テレビ や ネット などを通じて 「夢」を 語っている 実際の人間の方々 を 拝見するようになってみると… |
| |
![]() |
「世の中が こうなったらいいなぁ」 「こんな人間に なれたらいいなぁ」 といった程度の、 とても ボンヤリと したもの としか 感じられませんでした。 |
| |
![]() |
『こんな人間に成るには、 「実際 具体的に」 自分は、 何をすればいいのか?』… 『世の中が こう変わるには、 「実際 具体的に」 自分たちは、 何をすればいいのか?』… |
| |
![]() |
そういった、 真に大切な部分 を、 ご本人たちが 「見よう」とも 「考えよう」とも していない… そんなふうに感じることが、 実に多かったのです。 |
| |
![]() |
それについて 今までは、 「私自身が まだまだ 人間さんたちについて 勉強不足」であったり、 「人間さんたちの『謙遜さ』が、 たまたま そんなふうに 見えてしまっているだけ」 なのだと 考えていたのですが… |
話している ミューラー の 視線が、 置きっぱなしになっている 「アイディアメモの入った 封筒」に 向けられていることに 気づいた ふき は、 恥ずかしくなって、 あわてて それを 手元に引き寄せるのでした。 ![]() ![]() |
| |
![]() |
もしかしたら、 今の人間さんたちは、 「夢」というものを、 『持っていることが カッコいい』 『持ってさえいればイイ』 ぐらいにしか、 考えていなかったり するのでしょうか? |
| |
![]() |
かもね。 『アクセ(サリー)』か 何か ぐらいに 思ってんじゃないの? |
寂しそうに つぶやく ミューラー に、 ネック が、 鼻で笑いながら そんな事を言いました。 | |
![]() |
かなう見込みの無い、 かなえるつもりも無い 夢 なんて、 ただの 「あこがれ」や「妄想」 なのにね… |
ネック の 視線までもが、 封筒に向けられている ことに気づき、 ふき は それを隠すように 胸に抱きかかえました。 ![]() クシャクシャに なってしまった封筒が、 さびしげです… | |
![]() |
ま、でも、 そんなものでも 「本人たちにとっちゃ 必要」 なのかもね。 |
| |
![]() |
『自分は 輝いているんだ』 『幸せなんだ』 『他人とは ちょっと違うんだ』 って 思い込む ためには さ。 |
| |
![]() |
自分を「夢」で 飾って 満足しているだけ… て、 あたしに言わせりゃ キモすぎ ですけど… |
ネックは、そんな感想を 語りながら、 公園に居たころ のことを 思い出していました。 ネック自身が しゃべれる (人間の言葉が分かる) 猫であることを 秘密 にしていたので、 公園に来る人たちは、 ネック のことを、 単なる 猫 … 「言葉の 分からない相手」 だと思い込んで、 気軽に 自分語りを してくることが よくありました。 ![]() ある者は、 日々の グチ について… ある者は、 将来の 夢 について… でも、 そうやって 多くの人間の 「夢」を聞いてきた ネック は、 ミューラー の言う 「違和感」と 同じようなものを、 いつも ボンヤリと感じていました。 ![]() そして だいたい、 そんな「アヤフヤな 夢」を 語っていた人間は、 しばらくすると、 自分の夢と 現実の「ギャップ」 に つぶされていくのか、 じょじょに 覇気が 無くなってきて… やがて、公園に 来なくなってしまう のです。 ふき は、 ネック の 視線が いつの間にか、 封筒ではなく 「自分」に注がれている ことに 気づきました。 ![]() でも、 ネック の その目は、 いつもの 小馬鹿にした それではなく、 なにか、 とても遠くを見ている ような、 不思議なもの だったのですが… ![]() |