サイト『生きる意味の「正体」教えてやるにゃー』
第2章『それって、しあわせ?』
将来の『夢』が あれば、本当に しあわせ?


■ 将来の『夢』が あれば、
本当に しあわせ?(2/5)


『「夢」を、単なる
「人生のアクセサリー」と
勘違いしている人々』





ねえねえ、ふき

ミューラー
「アイディア 見せて」
って 言ってるよ?




あたしも ぜひ
見てみたいなぁ。

あんたの
『大傑作』の 原石
ってやつを さ。





ふきは 困惑した顔のまま、
自分の机 に歩いて行きました。





そして、
何度か ためらいながら
引き出しを開け、

中から
「大きな封筒」
取り出し…



何度か ためらいながら、
ネックミューラー
目の前の床に、

その中身を広げたのでした。

 




中から出てきたのは、
大量の 細かいメモ用紙


それらのメモ1つ1つには、
断片的な ゲームアイディア
が 走り書かれています。



…ところが、
どこを探しても、

「それらのアイディアを
まとめたもの」が
見当たらない
のでした。





…あの、ふきくん。


これで 全部 でしょうか?





不思議そうに たずねる
ミューラー に、

ふき が、苦しい顔で
うなずきました。







これを
「開発の 皆さん」
見せると、

ゲームを作ってもらえる
のでしょうか…?





重ねて聞く ミューラー に、

ふき は 先ほどより
さらに苦しそうな顔で
首をふりました。








なによ これ?

ま〜だ ぜんぜん
「形に なってない」

じゃないの。




ネック に 急所を突かれて
肩が ビクン と ふるえた
ふき でしたが、

弱々しくも
必死の反論を試みます。




い、いや。

『オレの 頭の中』では
ある程度 構想は、
まとまってる
んだよ?




でも 今は、
毎日 仕事が忙しくて…



「時間」さえ、

「時間」さえあれば…




でも、ふきくん の
頭の中にあるという
「ゲームの構想」は、

「言葉だけで」
スタッフの皆さんに
伝わるのでしょうか…?




それに、

ふきくんの 仕事に、
今後 「時間的余裕」が
できてくるという保証は…?





心配そうな
ミューラー の 言葉に、

結果的に
さらに 痛い所を突かれ て、

ふき の 顔面は、これまでになく
深く 青黒く なっていくのでした。






うん、まあ…

とりあえず
よく分かったわ ふき


あんたが
「しあわせだ」って 自慢してた
『夢』ってのは…




形になるかどうかは
「二の次」で、


「成功した自分」を
妄想してニヤニヤして、


ちょっとの間、
『今のミジメな自分』から
目をそらすための 代物


…て とこかしら?




「宝くじ」とかと
どこが違うのか、


説明してほしい んですけど〜?





ネック は、
そんなイヤミを言いながら、

ふき の 顔を
のぞきこみました。




当の ふき は、
白目をむいて
気絶しておりましたが…





  




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あー… まあ、

あたしにも
言いすぎなとこが
あったかもしんないけどさ…




あんたも 気絶 なんか
してんじゃないわよ、
ふき






ネック は、

目覚めて、ようやく
落ち着いた ふき に、

そんな 反省のような 文句のような
言葉
を こぼしました。







しかし…

ふきくん の
お持ちの「夢」


実現までの道は
まだまだ 遠そう
ですね…




ミューラー が、

とても残念そうに
首を左右に振っています。




ただ、今回の件で、

私が
「人間さんたちの夢」
について勉強

していたときに感じた
『違和感』の 正体が…

ちょっと 分かったように
思います。




…い、違和感?




トンビ紳士の発した言葉に、

うなだれていた ふき
頭を上げました。




はい。

私は当初、
人間さんたちの「夢」
というものは、

『自分の将来に向けての
目標』
なのだと
考えておりました。




「夢」という
『具体的な 目標点』
設けることで、

人生という広大なフィールドを、
アテも無く 闇雲にウロつく
といった愚行
を 回避し、

「限りある時間(寿命)」を
可能なかぎり有効活用
する…




そのための
手段・知恵
であると、
解釈していたわけです。





ここで ミューラーは、

ちょっと 寂しそうな顔
に なりました。






ところが、

ふきくんの家で
暮らすようになり、

テレビ や ネット などを通じて
「夢」を 語っている
実際の人間の方々

拝見するようになってみると…




「世の中が こうなったらいいなぁ」
「こんな人間に なれたらいいなぁ」

といった程度の、

とても ボンヤリとした
漠然としたもの
としか
感じられませんでした。




『こんな人間に成るには、
「実際 具体的に」 自分は、
何をすればいいのか?
』…

『世の中が こう変わるには、
「実際 具体的に」 自分たちは、
何をすればいいのか?
』…




そういった、
真に大切な部分 を、

ご本人たちが「見よう」とも
「考えよう」ともしていない…



そんなふうに感じることが、
実に多かったのです。




それについて 今までは、

「私自身が まだまだ
人間さんたちについて勉強不足」

であったり、

「人間さんたちの『謙遜さ』が、
たまたま そんなふうに
見えてしまっているだけ」

なのだと
考えていたのですが…





話している
ミューラー の 視線が、

置きっぱなしになっている
「アイディアメモの入った 封筒」
向けられていることに
気づいた ふき は、


恥ずかしくなって、
あわてて それを
手元に引き寄せるのでした。


  




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もしかしたら、
今の人間さんたちは、
「夢」というものを…




『持っていることが
カッコいい』


『持ってさえいればイイ』
程度にしか、

考えていなかったり
するのでしょうか…?




かもね。

『アクセ(サリー)
何か ぐらいに
思ってんじゃないの?




寂しそうに つぶやく
ミューラー に、

ネック が、鼻で笑いながら
そんな事を言いました。




かなう見込みの無い、
かなえるつもりも無い 夢

なんて、

ただの
「あこがれ」や「妄想」
なのにね…





ネック の 視線までもが、
封筒に向けられている
ことに気づき、

ふき は それを隠すように
胸に抱きかかえました。





クシャクシャに
なってしまった封筒が、
さびしげです…





ま、でも、

そんなものでも
「本人たちにとっちゃ 必要」
なのかもね。




『自分は 輝いているんだ』
『幸せなんだ』
『他人とは ちょっと違うんだ』


って 思い込む
ためには さ。




自分を「夢」で 飾って
満足しているだけ…
て、

あたしに言わせりゃ
キモすぎ ですけど…





ネックは、そんな感想を
語りながら、

公園に居たころ のことを
思い出していました。



ネック自身が しゃべれる
(人間の言葉が分かる)

猫であることを
秘密 にしていたので、

公園に来る人たちは、
ネック のことを、単なる 猫

「言葉の 分からない相手」
だと思い込んで、

だからこそ気軽に
自分語りをしてくることが
よくありました。






ある者は、
日々の グチ について…

ある者は、
将来の 夢 について…




でも、

そうやって 多くの人間の
「夢」を聞いてきた
ネック は、

ミューラー の言う
「違和感」
同じようなものを、

いつも
ボンヤリと感じていました。






そして だいたい、

そんな「アヤフヤな 夢」
語っていた人間
は、

しばらくすると、
自分の夢と 現実の「ギャップ」
に つぶされていくのか、

じょじょに
覇気が 無くなってきて…


やがて、公園に
来なくなってしまう

のです。




ふき は、
ネック の 視線が

いつの間にか、
封筒ではなく
「自分」に注がれている
ことに
気づきました。






でも、
ネック の その目は、

いつもの 小馬鹿にした
それではなく、


なにか、
とても遠くを見ている
ような、

不思議なもの
だったのですが…





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