■ 「夢」 を、単なる人生の
アクセサリーにしていない?(4/5)






はい。 私は当初、
人間さんたちの 「夢」 というものは、

『自分の将来に向けての目標』
なのだと考えておりました。


「夢」 という目標点を設けることで、

人生というフィールドを
むやみにウロつく愚行を回避し、

限りある時間(寿命) を
可能なかぎり有効的に活用する…



そのための 手段・知恵 と、
解釈していたわけです。





ところが、
ふきくん の家で暮らすようになり、

テレビ や ネット などを通じて
実際に 「夢」 を語っている
人間の方々を拝見していると、

「世の中が こうなったらいいなぁ」
「こんな人間に なれたらいいなぁ」
といった程度の、

とてもボンヤリとしたもの
としか 感じられなかったのです。


「こんな人間になるには、
実際 自分は、
何をすればいいのか?」

「世の中がこうなるには、
実際 自分たちは、
何をすればいいのか?」


といった大切な部分を、

ご本人たちが見ようとしておらず、
考えようともしていない、


そんなふうに感じることが
実に多かったのです…





今までは 私自身、それは、

自分が まだまだ勉強不足であることと、
人間さんたちの 「謙遜」 が原因で、

「そんなふうに 見えてしまっているだけ」
なのだと思っていたのですが…






話している ミューラー の視線が、

置きっぱなしになっている
「アイディアメモの入った封筒」 に
向いていることに気づいた ふき は、

恥ずかしくなって、
あわてて それを
手元に引き寄せるのでした。





もしかしたら、
今の人間さんたちは、

夢というものを、

「持っていることがカッコいい」

「持ってさえいればイイ」


としか、考えていなかったり
するのではないでしょうか?





『アクセ』(サリー) か何かだと
思ってんじゃないの?



ネック
鼻で笑いながら言いました。





かなえるつもりの無い、
かなう見込みのない夢なんて、

ただの 「あこがれ や 妄想」

なのにねぇ…





ネック の視線までもが、
封筒に向けられていることに気づき、

ふき は それを隠すように
胸に抱きかかえました。



クシャクシャに
なってしまった封筒が、
さびしげです。





ま、そんなものでも、
本人たちにとっちゃ
必要なんじゃないの?


『自分は輝いているんだ、幸せなんだ
他人とは ちょっと違うんだ』

って思い込む
ためには さ。





自分を 「夢」 で飾って
満足しているだけ… て、

あたしに言わせりゃ
キモすぎ なんですけど。







そんな感想を語りながら、

ネックは、公園に居たころのことを
思い出していました。



ネックしゃべれる
(人間の言葉が分かる)
猫であることは

ネック自身、秘密にしていたので、


公園に来る人たちは、
単なる猫

「言葉の分からない相手」
だと思い込んで、

ネック気軽に 自分語りを
することがよくありました。




日々のグチ や、

将来の夢 について…






でも、そうやって多くの人間の
「夢」 を聞いてきた ネック は、

ミューラー の言う 「違和感」 と
同じようなものを、

いつも ボンヤリと感じていました。




そして だいたい、

そんな 「アヤフヤな夢」 を
語っていた人間は、

しばらくすると、
自分の夢と 現実のギャップ
つぶれていくのか、

覇気が無くなってきて、

やがて公園に
来なくなってしまう
のです…








ふき は、ネック の視線が
いつの間にか、

封筒ではなく 「自分」 に
注がれていることに気づきました。







でも、ネック の その目は、

いつもの小馬鹿にした それではなく、

なにか、とても遠くを見ている ような、
不思議なものだったのですが…








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