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第4章『「DNAの生存本能」で「しあわせ」を考える』→ 『実は しあわせではない人』の、言動の特徴 |
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あたしも うろ憶えだけど、 前に あんた、 「若さ」について 話したとき、 『オレら若者に比べて、 お年寄りは 憐れ!』 とか 言ってたでしょ? | |
たしかに、 そんなことを言った記憶が、 ふき にも あります。 | |
で、「物」や「お金」の 話をしたときは、 『目先の食費にすら困って ピーピー言ってる 「無計画な奴ら」に比べて、 自分は 本当にしあわせ!』 とか 言ったよね? | |
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あと、「学歴」のときは、 『イヤな勉強にも シッカリ耐える、 オレみたいな人間は、 「受験から逃げた 怠け者ども」とは違って、 ガマン強くて立派!』 とか 自慢してたよね? いやはや、 ご立派なことですこと… | |
ネック には 鼻で笑われ、 かみね と ミューラー には、 「ふきさん… そんな事を 言ってたのですか?」 という顔つきで 見つめられ、 ふき は 恥ずかしさで、 顔が だんだん 下を向いていきました。 | |
他にも、 『自分は「就職」してるから、 無職で平気でいられるやつの 気が知れない』とか、 『「夢」を持ってない奴は、 死んでるのも同然』とか… | |
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『世の中には、 「友だち」も持てない 孤独なヤツらが たくさんいる』とか、 『「彼女」がいない 憐れな男どもの ネタミの視線が うるさい』とか… | |
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うわあ… 言ってる あたしのほうが 恥ずかしくなってくるわ。 …ちょっと、 聞いてんの、ふき!? | |
部屋の真ん中で ダンゴ虫のように丸まって、 顔をおおっている ふき の 頭を、 ネック が前足で ペシペシ 叩きました。 | |
か… か… 勘弁してくださいよ、 ネックさん… そ、そりゃ、我ながら 「みっともない勘違い」を してたとは思いますけど、 今は もう、 その間違いにも気づけてる わけじゃないですか? | |
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どうして 今さら、 そんな『古傷』を えぐるようなことを… | |
すると ネック は、 ちょっと 意外そうな顔をして、 こんなことを 言うのでした。 | |
ふーん… これだけ並べてみても 『気づけない』んだ? | |
え? |
ふき は てっきり、 ネックが 勝ち誇ったような態度を とるかと思ったのですが… ネック の 顔つきは、 むしろ 失望というか、 呆れ果てている 感じです。 「これだけ並べてみても 気づけない?」とは、 どういう意味なのでしょう? そういえば、 さっき ネック は、 『法則』が どうとか 言っていたような… そのとき 突然、 ミューラー と かみね が、 ハッと ひらめいて 顔を上げました。 | |
!!! なるほど! そういう事 でしたか… | |
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あ! わ、わたしも 分かっちゃいました! | |
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なに なに なに、 なんなの?? ぼ、僕の言葉の 『法則』って、 いったい… | |
孤立して うろたえる ふき に、 かみね が 驚きと呆れを 混ぜたような声 で、 こう 言い放ったのです。 | |
ふきさんって… 『 他人の 悪口 』 ばっかり言ってる!! | |
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ええっ!!?? | |
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たしかに… 必ず、その要素について、 ご自分より 明確に劣っている人を 「引き合い」に出して、 『だから、自分は 「しあわせ」なのだ』 と、結論づけ ていますね… | |
『そんな バカな!?』 …と、一瞬 思った ふき でしたが、 自分の言葉を1つ1つ 思い出していく につれて、 その顔が 少しずつ 青ざめていきました… | |
…ほ、本当だ。 な、な、なんで…?? | |
なかば パニックになった ふき に、 ネック が、さとすように こう言いました。 | |
それはねぇ、ふき。 結局は 『あんた自身が、 自分の「しあわせ」に 自信を持てて いなかったから』よ? | |
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僕自身が、 自分の「しあわせ」に… 自信を持てて いなかった…?? | |
ネック の 言葉を 繰り返す ふき に、 ミューラー が うなずきながら、 解説を始めました。 |
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まさに、 ネックさん の おっしゃられる通り だと思います。 ふきくん が、もし本当に ご自分の「しあわせ」に 自信がある のであれば… | |
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わざわざ『他人』を… しかも、 「世間的に見て、 明らかに自分より不利」 と 思われる人 を、 比較対象に持ってきて、 『あの人たちより、 自分は しあわせだ!』 などと言う必要は 無いはずだからです。 | |
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自分の現状に 本当に満足している人 は、 (良い意味で) 『周りに無関心になる』 ものです。 | |
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自分の中に、 大きな「自信」や 「安心」があり、 『他者との 比較の 必要性を感じない』 からです。 | |
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逆に、 心の どこかで 不満・不安 を 抱えている人は、 (悪い意味で) 『他人のことを ものすごく気にする』 ようになります。 自分の中の「不安定さ」が、 そうさせる のです。 | |
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ふきさん が、 「僕は、しあわせだ!」 とだけ言わずに、 『僕は、○○に 比べたら、 しあわせだ!』 という言い方を していたのには、 そんな理由 が 隠れていたんですね… | |
ふき は ただ茫然と、 かみね と ミューラー の 会話を見つめています… | |
もちろん、 たとえば 『 能力などが 自分より上の人 』と、 自分を「比較」すること… 「違いを探す」ようなこと は、 とても 大切 です。 | |
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そこには「学び」があり、 『自己の 向上』に つながっていくからです。 | |
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しかし、 「自分より 能力や立場が下の人」 との 比較 には、 ほとんど 意味は ありません… そこで得られるのは、 『 いつわりの 安心感 』や 『 一時的な 優越感 』 ぐらいではないでしょうか? | |
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少なくとも、 『ご自身の 成長』からは 真逆のもの しか、 得られないと思います… | |
まさか 自分の中に、 そんな 「思考の クセ」が 潜んでいたとは… ふき は、 ネック が この家に来た当初、 彼女は なにげなく 自分の自慢話を 聞いているものだとばかり 思っていたのですが… 実は、 あの時点で すでに、 「自分の心」は、 この白猫に、 裏の裏まで シッカリと、 見透かされて しまっていた のです… |