■ その 「しあわせ」 は、
相対的? 絶対的?(2/5)







あたしも うろ憶えだけど、

前に あんた、
「若さ」 について話したときは、

『お年寄りは憐れ』
とか 言ってたでしょ?





たしかに、そんな事を言った記憶が、

ふき にも あります。









で、「物」 や 「お金」 の
話をしたときは、

『目先の食費にすら困って
ピーピー言ってる無計画な奴ら
に比べて、自分はしあわせ』


とか 言ったよね?





で、「学歴」 のときは、

『イヤな勉強にもシッカリ耐える、
オレみたいな人間は、
ガマン強くて立派』
だの、

『受験から逃げた 怠け者どもとは違う』
とか 自慢してたよね?

いやはや、ご立派なことだねぇ。





ネック に 鼻で笑われ、

かみねミューラー
ふきさん、そんな事を言ってたのですか?」
という顔つきで見つめられ、

ふき は 恥ずかしさで、
顔が だんだん下を向いていきました。


    






他にも、

『自分は 「就職」 してるから、
無職で平気でいられるやつの
気が知れない』
とか、


『「夢」 を持ってない奴は、
死んでるのも同然』
とか、


『世の中には、「友だち」 も持てない
孤独なヤツらが たくさんいる』
とか、


『彼女がいない憐れな男どもの
ネタミの視線がうるさい』
とか…





うわあ…

言ってる あたしのほうが
恥ずかしくなってくるわ。



ちょっと、聞いてんの、ふき!?





部屋の真ん中で
ダンゴ虫のように丸まって、
顔をおおっている ふき の頭を、

ネック が前足で
ペシペシ 叩きました。





か… か… 勘弁してくださいよ、
ネックさん…

そ、そりゃ、我ながら
みっともない勘違いを
してたとは思いますけど、

今はもう、その間違いにも
気づけてるわけじゃないですか?


どうして今さら、
そんな古傷をえぐるようなことを…





すると ネック は、

ちょっと意外そうな顔をして、

こんなことを言うのでした。





ふーん…

これだけ並べてみても
気づけないんだ?






え?






ふき は てっきり、

ネックが 勝ち誇ったような態度を
とるかと思ったのですが…


ネック の 顔つきは、
むしろ 失望というか、
呆れ果てている感じがします。



「これだけ並べてみても気づけない」

とは、どういう意味なのでしょう?



そういえば、さっき ネック は、

『法則』 が どうとか言っていたような…






そのとき 突然、

ミューラーかみね が、
ハッと ひらめいて顔を上げました。






なるほど!

そういう事 でしたか…




あ! わ、わたしも

分かっちゃいました!




なに なに なに、なんなの??

ぼ、僕の言葉の
「法則」 って、いったい…





孤立して うろたえる ふき に、

かみね が 驚きと呆れを
混ぜたような顔で、

こう 言い放ったのです。







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