■ 月夜のネック(3/5)





ふき は、

自分の体が
ギクンと固くなったような
気がしました。





あたし…

別に なんにも
悪いことしてないのに…





そんなことを言いながら、

小さく深い
ため息をついて

下を向いてしまった
ネック に…


ふき
言葉を失いました…







考えてみれば、ふきは…

いや、世の中の
ほとんどの人たちは、


「残り寿命が 明確に
分かってしまっている人」


と 話す経験が、
ほぼ ありません。




治る見込みのある
病気やケガなら、

励ましようも
あるでしょうが、


ネック は、
あと 10日ほどで、

必ず その命を
終わらせてしまう
のです。




猫とはいえ、

まだ 4年しか
生きていない ネック に、

こんなとき、

かけられる
「適切な言葉」など、
あるものでしょうか…?



  





「死」は、
相手を選びません…



それまでの人生を
どんなに一生懸命
生きていても、


どんなに立派で
すばらしく、
思いやりに満ちた日々を
すごしていても、


そんなことに
まったく関係なく、
偶然に訪れる
のが、


『「死」というものの
不条理さ』
なのです…







で、でも…




そのとき ふき は、

ようやく 1つだけ、

ネック
『未来』があることを
思い出しました。






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