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第3章『しあわせ の「正体」』→ マズローの 欲求5段階説 |
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私が説明を後回しにした、 『マズローの 自己実現理論』の 2つの追加説明。 その まず 1つ目 は… |
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まさに ネックさんが おっしゃられた 『途中の段階を飛び越して、 上の段に進むケースがある』 点についてです。 |
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ふきくんが 以前に語ってくださった 「幸せ」の 中では、 『将来 の 夢』が、 まさに これにあたりますね。 |
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「現在より 大きく高い 能力を持った自分」を 夢見るという事は、 逆に言えば 『今の自分には それが無い』 わけで… |
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「資金力」も「人脈」も、 おそらく「社会的地位」も、 まだまだ 「欲求を満たす」レベルでは 無いはず です。 |
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…にもかかわらず、 「ピラミッドの最上段」の 『自己実現』を 一気に目指そうとする … 考えてみれば これは、 大きな矛盾 です。 |
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そ、それって やっぱり… 僕の生き方が 不自然 って 事ですか? |
ふき は 半泣きになりましたが、 ミューラーは しずかに 首を横に振りました。 | |
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いいえ。 私は むしろ、 『とても人間さんらしい』 欲求のジャンプ だと 思っています。 |
唐突に「人間らしい」と 言われて、 ふきたちは キョトン顔になりました。 ![]() ![]() ![]() | |
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もし「人間さん」が、 私たち 一般的な動物と 同じ程度 であれば、 こうした「欲求のジャンプ」は 起こらない でしょうし、 そもそも 『自己実現』の ランクまで 欲求が登ることも無い でしょう。 |
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しかし、 人間さんには 『知性』と『理性』 があります。 |
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『知性』が あれば、 欲求の階段を 1つずつ登らなくても、 他者から「情報」として知り得た さまざまな『自己実現』の手段 へと、 直接、意識(欲求)を 向ける こともできる… |
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つまり 「目先の欲求」 だけではなく、 『ずっと彼方の欲求』を 見据えることもできる わけです。 |
普通なら「実体験」からしか 導けない道を、 知性 によって 知ったり 逆算できる 唯一の生物が『人間』… といった所でしょうか? ![]() ![]() |
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さらに言えば 人間さんの脳 (大脳新皮質)には、 「本能的な欲求」に 振り回されすぎないよう、 ある程度 それを コントロールできる能力 … |
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すなわち、 『理性』が 備わっています。 |
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それによって 人間さんは、 「出世や、結婚や、貯金も もちろん大事だけど、 今の自分の最優先は 『自己実現』だ」 と 深く自覚することで、 「途中の段階の欲求」を 抑え込み … |
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いきなり『自己実現』に 向かう ことも、 場合によっては 可能なのです。 |
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生物さんの中でも 「飛びぬけて高性能な頭脳」 を 持っている 人間さんだからこそ、 できる事なのですね? |
ミューラーは うれしそうに、 深く 何度もうなずきつつも… 少し顔を引きしめて、 このようにも説明しました。 | |
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もちろん… それは「諸刃の剣」 でもあります。 |
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ただ単に 『知性』で 「遠く(未来)を 見つめる」 だけ では、 「足元(現在)」が おろそかになる危険 も ともないますし… |
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『理性』で「欲求」を 抑えこんで も、 社会的地位 や 安全 が 安定していなければ、 現実問題として 不安も多く … |
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『自己実現』を 目標としつつも、 なかなか それに 集中できず、 結果的に 人生を遠回りしてしまう危険 も 間違いなく存在している のですから… |
ミューラーの 話を聞いている ふきの 脳裏に、 先日のテレビで見た、 『デビューを目指して がんばり続ける 音楽バンド・お笑い芸人・ 漫画家などを紹介する特番』が 思い出されました。 ![]() 生活時間の大半を バイトなどに費やしつつ 「作品づくり」を 並行させているためか、 彼らが作ったものには アセリというか 余裕の無さが見られ、 どうしても「底の浅さ」が 目立っていました。 また、 『とにかく ツメあとを残したい』 (人々の記憶に残って、成功につなげたい) という欲求が 前面に出すぎてしまっている 「インパクト重視」の 作りには、 見ていて ちょっと応援する気になれない 不快感 すら 湧いてくるのでした。 ![]() ![]() しかし、 これは ふき にとって 他人事ではありません。 かくいう ふき自身も、 ゲームプランナーという「夢」を 目指しているはずなのに 日々の会社の仕事に忙殺 され、 何年も「ゲームアイディアの 走り書きメモ」を ためる程度の ことしか出来ていなかった のですから。 (しかも、そんな自分の「停滞」に 疑問すら抱かないまま…) ![]() | |
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『自己実現』は 素晴らしい欲求 ですが… |
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それに向って 盲目的に 邁進してしまう のは、 「肩書」や「恋愛」や 「称賛」欲しさに 自分が見えなくなって しまっている人々 と、 結局「何も変わらない」のでは ないでしょうか? |
そんな ミューラーの 言葉に、 ふき は、 ゲームアイディアのメモを まとめた袋の入っている 机のほうをチラリと見て、 自戒するように、 しみじみと 何度も うなずいた のでした。 ![]() ![]() ![]() |