■ 「仕事」 を、生存本能で考える(2/2)






すると、

ずっと話を聞いていた かみね が、

ちょっとナナメ下を見ながら、
こう言いました。





私たち 「神さま」 は、
この世の中に直接は
かかわりませんから、

ふきさん が 感じているような
ツラい日々を強いられることは
ありませんが…

ときどき、それを
寂しく思うこともあります。


「周りから影響を受けなくて
気軽な代わりに、

周りに影響も与えられないのが、
私たちなんだなぁ」
って…






「それが どんなに小さな行動でも、

自分の望む世界に近づけるために、
自発的に世界に かかわることができる」 …




かみねたち 「神さま」 には、

どんなに望んでも、
それができない
のです。



彼らは ただ、

自分たちの住む場所に
来てくれた 生き物の一部に、

「世の中に ほとんど影響を与えないレベル」
の 願い事を かなえてあげる
ことしかできない存在…



その願いも、

あくまで 「相手の願い」 であって、
『自分の願い』 ではない のですから…









いや、それを言えば、

今でこそ ふき と対等に
『生きる意味』 を論じ合っている
ミューラーネック だって、

神さまから
「人間並の知能」
与えられていなければ、

単なる1動物として、

「世の中に関わる」 どころか、
ただただ目先の1日1日を
生きのびるためだけに
死にもの狂いで奔走するだけの日々

を送るに すぎなかったはずです。




この中で、ふき だけが…

『人間たち』 だけが、

「仕事」 などの形で社会にかかわり、

自発的に世の中を動かし、

次の時代に 物や道具のような
「何か」 を残せている…





ふき は、自分たち 「人間」

「他の動物と違って高度」
とまでは言わないまでも、

(さっき ネック にも笑われましたし)

『何かが根本的に、他の動物と違う』

ことに 気が付きつつありました。










与えられた 「仕事」 を、
ただ無思考に こなすのではなく、

それをこなしていく中で、
「少しでも世の中を、
自分の本当に望むかたちに
自発的に変えていく」



その上で、生活の糧である
「お金」 などを手に入れられたら、

これほどの 「しあわせ」 は
存在しないのではないでしょうか?





「今まで」 を後悔するのではなく、

「明日から」

いや 「この瞬間から」 の自分の人生を、
そんなふうに変えていきたい




ふき の 心の奥底で、

小さいけれど、
何かのエンジンが かかったような
感覚がありました。










そして、そんな ふき を、

ネック は、なにか、

とても深いまなざしで
見つめているのでした。










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