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第9章『将来 100%滅亡する、われわれ「生物」2』→ 将来 100% 無くなってしまう、我々の住む『この宇宙』 |
『人類や、 われわれ生物は 将来 必ず、100%、 滅亡してしまう』… ふき も、明確に 思い出してきました。 そうです。 たしかに ミューラー は あの日、 ふきたちに、 そう 断言していました。 でも、考えてみると それは 変では ないでしょうか? というのも、 この宇宙の中の、 「生存に適した恒星系」を、 なんとか うまく 渡り歩いて行く ことさえできれば、 (その成功率は 非常に小さいとはいえ) 少なくとも 地球生物は、 滅亡だけは まぬがれられる はずなのです。 なのに どうして、 『滅亡 が 確定』 ということに なってしまうのでしょう?? | |
たしかに、 ある「惑星」の寿命が つきる前に、別の 惑星へ… ある「恒星系」の寿命が つきる前に、別の 恒星系へ と 『移住』していくことで、 取りあえず われわれが 「生存環境を確保」しつづける ことは可能 です。 | |
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でもですね、 ふきくん… | |
ミューラー が、 ふき の 目を まっすぐ見つめました。 | |
『この宇宙』 そのものの 寿命 が 来てしまったら、 もう 我々の 移住できる場所は、 どこにも 存在しなく なってしまう のです… | |
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『宇宙の 寿命』!!? そ、そんなものが あったのですか !?? | |
悲鳴のような声をあげた かみね と、 絶句している ふき に、 ミューラー が 深く うなずきました。 | |
はい… ただし、 『寿命』といっても、 この宇宙自体が 「消滅」してしまうわけでは ありません。 | |
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遠い未来に、 この宇宙の中の 「エネルギー」が、 『空間全体に 拡散』 してしまう のです… | |
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『エネルギーの 拡散』… というと…?? | |
首をひねる ふき に、 ミューラー は こう 説明しました。 |
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たとえばですが、 ふきくん。 「水のタップリ入った バケツに、 赤いインクを1滴、 ポトリと落とした」 とします。 | |
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すると、 インクは どうなるでしょう? | |
ミューラー の 唐突な質問に、 ふき は、しばらく ナナメ上を見つめた後、 こう 答えました。 | |
『ものすごく 薄ーい ピンク色の水が できる』 …んじゃ ないですか? バケツの水 全体に インクが広がっていくから… | |
ミューラー が、 ニッコリと うなずきました。 | |
その通りです。 水に落とされたインクは、 水全体に「拡散」していき、 最終的には 「ほぼ一様」になって 安定 します。 | |
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なぜ、そうなるのか… それは、この世の あらゆる物事が、 「規則 正しく」 「1点に 集中」 しているよりも… | |
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「ランダムに」 「まんべんなく存在」 している状態へと、 自然に 移行していく ものだからです。 | |
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このような流れを、 難しい言葉で、 『エントロピーが 増大する』 と 表現します。 | |
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インクたちも、 1ヵ所に ピシーッと 集まってるより、 全体に ダラ〜ンと 広がったほうが、 『楽』なわけね? | |
正確には ちょっと違いますが、 あながち 間違っているわけでもない ネック の 言葉に、 ミューラー は ほほえみつつ、 うなずきました。 | |
さて、問題は、 これが「インク」だけに かぎらず、 「エネルギー」… 『熱』についても 同じ だという点です。 | |
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たとえば 石油ストーブをたくと、 お部屋の中に、 あたたかい空気が まんべんなく 広がって くれますよね。 | |
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でも 逆に、 『あたためられた空気が、 部屋の どこか1ヵ所に、 自然に ヒュッと集まる』 ようなことは、 ありません。 | |
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また、 『あたためられた空気が、 自然に 化学反応を 逆に たどっていって、 石油に戻る』… といったことも 起こりえません。 | |
ふきたち は うなずきました。 そんな事が起こったら、 『ホラー』です。 |
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太陽のような 『恒星』の エネルギー も、 いわば、 「ストーブ」と同じです。 | |
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恒星から放たれる エネルギーは、 「地球」のような 近隣の惑星を あたためてくれます が… そうしたエネルギーが、 恒星に 戻っていく ことはありません。 | |
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エネルギーは、一方的に 周りに 拡散されつづけ… やがて、エネルギーを 使い切った 恒星は、 冷たく沈黙してしまう のです。 | |
この話に、 ふき は あわてました。 | |
で、で、でも、 そうやって死んでいく 恒星たちも、 ただ 無意味に 冷たい塊になってしまう わけじゃない ですよね? | |
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「恒星の死に際に バラまかれた物質」 を もとに、 新たな『星雲』が 作られて、 その中から また、 『新たな 星々』が 生まれてくる… | |
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僕らの宇宙の中では、 こうした『循環』が 今 この瞬間も… そして、これからも ずっと ずっと、 「永遠に」繰り返される んじゃ ないんですか?? | |
このあたりは、 さすが「星好き」の ふき らしい見方です。 しかし ミューラーは、 静かに首をふりました。 | |
ふきくんの お話は、 「前半」は 確かに その通りです。 しかし 残念ながら、 このルーチンは、 『永遠には 続かない』 のです。 | |
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宇宙内の物質は、 そうした「集中・分散」を 繰り返しながらも、 長期的に見れば 少しずつ ジワジワと、 空間に まんべんなく 『拡散』していく ことになります… | |
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その結果、 我々の宇宙は、 今から 100兆年 ほど 経ったころには… | |
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もう エネルギーが 「拡散」しきってしまい、 『新しい星を 生み出せなくなる』 (物質が十分に 集中できなくなる) と 考えられています。 | |
ふきたちは、 ミューラー の この言葉を聞いて、 しばらく 首をかしげて いましたが… 突如として、 同時に 絶叫したのでした。 ええっ!! 『星が 生まれない』!!? |
ふきたちの絶叫に、 ミューラー は 寂しそうに うなずきました。 | |
残念ながら、 そうなのです… そして、 「新しい星が 生まれない」 という事は… | |
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新たな 『エネルギー(熱)の 発生源』 も 生成されない という事です。 | |
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当然、 「そのような空間内で 活動できる生物」 など 皆無 であり… これは もう、 事実上の『宇宙の 死』 と 言えるのでは ないでしょうか? | |
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これこそが、 現代の 一部の人間さん… 『天文学者』や 『物理学者』たち が 予言している、 遠い未来の、 私たちの宇宙の姿 (熱的死) なのです… | |
もはや、 絶句するばかりの ふきたちに、 ミューラー は 続けました。 | |
私たちの宇宙は、 『ビッグバン』 と 呼ばれる現象を起点に 始まったと言われています。 | |
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何も無い1点から、 突然 信じがたい 高エネルギーが噴出し、 『宇宙』として 拡大を始めた のです。 | |
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それは まるで、 広い池の真ん中に、 石が投げ入れられた ようなもの です。 石が ドボンと 着水したところを中心に、 いくつもの波が発生し、 輪のように広がって いきます が… | |
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やがて それらの波は、 お互いに干渉しつつも、 少しずつ弱くなり、 いつかは また、 波のない 静かな水面 に 戻ってしまいます。 | |
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『私たちの宇宙』も また、 「ビッグバン」によって もたらされた 超々々エネルギーが、 空間内に 広がりきり… | |
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波打っていた池の水面が 静まるように、 冷たく停止していく のだと思います… | |
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